2008/12/05 映画「夢のまにまに」 木村威夫監督作品 - 菜花亭日乗
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2008-12-05 (Fri)  22:58

2008/12/05 映画「夢のまにまに」 木村威夫監督作品



仕事を終えてから、木村威夫監督の映画「夢のまにまに」を見てきた。



90歳の木村監督の処女作品と言うことに興味があり、見ることにした。
 普通男が90歳にもなれば、もう友人・知人の多くは黄泉の世界に行き、映画の処女作を撮る事は思いも及ばないことだから。
 木村威夫は、鈴木清順、黒木和雄ら名匠のもとで美術を担当し、映画美術界の巨匠であるらしい。



結論から言えば、活劇映画でもないし、ラブロマンスでもないし、面白い映画でもない。
 しかし、映画とは何か、人生とは何かという問題意識が重い映画である。


 


木村監督と思しき木室の戦時中から現在までの生を描いている。過去と現在、現実と思い出、空想と現前とが脈絡無く、時制を無視して織り合わされて紡がれていく、従って、意味のあるストーリー性はない。
 過去の時制の人物(思い出の中の人間)が現在の木室と同じ画面に映されている。この画面を見ている観客の目は木室の目になる。
 各ショットの積み重ねのモンタージュで構成されるものは木室の姿を借りた木村威夫の生である。
 戦後の焼け跡闇市時代には、太宰治・坂口安吾と場末の飲み屋で「爆弾」を飲むシーンが描かれる。
何分、90歳の人である、終戦時に30歳近い。軍国主義時代から敗戦後の混乱期、復興、成長期を経て現在の閉塞状況を生きている人の目である。



収斂していく生もしくは希薄になっていく生が老いとすれば、老いの目に映る「現実」というものはこれであるという報告である。
 其処では現実性はあまり大きな意味を与えられない。現実性とは、目の前にあり、見えている机を拳で叩いてみる、その時感じる反発、物の存在感が現実性である。
 老いの目にとって現実性は大きな意味を持たない。過去の思い出の或る光景、もう此の世からいなくなってしまった人、その言葉、ある時あるところにあったもの...
 現実性を持たない風景が心に映っている。其処では過去もなく、未来もなく、現在もない。恐らく金も地位もその光景に登場することはないだろう。
 固有のその人の生きた生の総体の光景、それがどのような光景なのかはその人次第なのだが、色々な光景が現れる老いの目が良いのかも知れない。



見ていて感じたことは、時制の点に関してはベルイマン、御鈴を持った巫女がバレエの振り付けを踊るシーンと大輔の妄想の中に登場するマリリンモンローが狂気へ誘うシーンはフェリーニを思い起こさせた。



出演者については、長門は、抑えた演技で存在感が薄いが、狂言回しの役だから良いだろう。有馬はいけない、痴呆役なのだが所々醒めている、もっと呆けた方が良い。
 井上はミュージカルの役者らしいが、登場最初の若者大輔は活きていた。統合失調症になってからは、有馬とおなじで醒めすぎている。



勧める気にはならないが、娯楽映画ではなく芸術映画に関心のある人は、見ても良いかもしれない。



【データ】



出演:
 長門裕之  木室創
 有馬稲子  木室エミ子
 井上芳雄  村上大輔
 宮沢りえ  中埜潤子
 永瀬正敏  若き日の木室
 上原多香子 若き日のエミ子
 浅野忠信  闇屋
 桃井かおり 村上大輔の母親
 観世榮夫 
 葛山信吾 
 南原健朗 
 高橋和也 
 エリカ 
 天羽祐香 
 飯島大輔 
 亜湖 
 銀座吟八 
 城川祐貴 
 小倉一郎 
 鈴木清順 



『解説:
映画美術の巨匠、木村威夫が監督として初めて挑んだ長編映画。年老いた映画学校の学院長を主人公に、青春期に体験した戦争の悲劇を背負って生き続けた一人の男の人生を、木村監督の自伝的要素を加えて描いたヒューマン・ドラマ。主演は長門裕之、共演に有馬稲子、井上芳雄。NK学院の学院長に就任した木室創は、一人の学生と交流するようになる。彼は心に病を抱えた青年、村上大輔。彼は、60年前に自分と同じような若者が戦争に散った不条理に苛立ちを覚え、苦悩を深めていく。そんな村上の姿に、自分の青春を重ねる木室。そして、長年連れ添ってきた木室の妻、エミ子もまた、戦争の陰を抱えたまま生きていたが…。』(allcinema)



『2008年10月20日 (月)
『夢のまにまに』初日舞台挨拶“木村威夫、長門裕之ら撮影秘話を語る”


 


日時:2008年10月18日(土)
場所:岩波ホール
登壇者:木村威夫監督、長門裕之、有馬稲子、井上芳雄、石井春奈


 



90歳の新人監督・木村威夫は退院した直後にも関わらず非常に元気な姿を見せ、『夢のまにまに』の公開を迎えた喜びを話した。46年ぶりの主演を務める長門裕之は有馬稲子の演じる認知症の妻・エミ子とのやりとりについて「実生活と似ていたので自然に出来た」と明かした。


 


■木村監督:「在来の手法ではなく、新しい世界を作ろうと試行錯誤しました。実体験も入れましたが、そればかりだと老人ホームのドキュメンタリーみたあいになってしまうので(笑)苦労しました。絵描きのように、どうなるのか分からないまま、進めていきました。長門さんと有馬さんはシンボリックな演技が出来るから、井上さんはミュージカルを拝見して一発で決めました」



■長門:「46年ぶりの主役なのに監督からは何もしなくていいと言われて、手足をもぎ取られました。そんな事言われるのも監督との長いお付き合いがあるからこそだと思います。だから終わった時も充足感がなかったんです(笑)でも本編を観た時に生きててよかったと思いました。有馬さんとのやりとりは実生活とリンクするところがあったので、スムーズにできたと思います」


 


■有馬:「今まで100作品以上の台本を読んできましたが、一番分からなかったです(笑)望まれていることが分からなかったのですが、「石になろう!」(=何も言わないけどなくてはならない)と決めました。長門さんとは初共演でしたが、50年来の夫婦のような気分になって自然に演技が出来ました。」


 


■井上:「自分のシーンを観た時には汗が出て、「早く終わってくれないかな?」と思いましたが、映像として残るものに出演させていただいたといことに幸せを感じました。舞台の演技のままだとオーバーなので、そこは気を付けましたが、根冠は舞台と一緒だと感じました」



■石井:「撮影自体はバタバタでしたが、カメラが回るとなぜかホッとしてしまうくらい温かい現場でした」』(Gyao cinema)



<上映館>
名演小劇場
 〒461-0005 名古屋市東区東桜2丁目23番7号
(上映時間案内) 052-931-1741(代)052-931-1701(FAX)052-931-8588
URL  http://homepage3.nifty.com/meien/



 

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最終更新日 : 2019-03-15

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