2010/12/23 NHKドギュメンタリー中島潔「風の画家 いのちを描く」 - 菜花亭日乗
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2010-12-23 (Thu)  23:47

2010/12/23 NHKドギュメンタリー中島潔「風の画家 いのちを描く」

NHKが風の画家中島潔を再び取りあげた。
前回は、5月にクローズアップ現代で中島潔の清水寺の襖絵にある彼の生きてきた過去と襖絵、特に鰯の絵である大漁との関係を取り上げた。
これについては、以下の記事に書いたが、いつも知的で冷静な国谷キャスターの涙が感動的だった。


2010/05/31 クローズアップ現代「風の画家・中島潔 "いのち"を描く」
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/e/3f12ca352fce7f605c8cea87eec2cc5b


今日は、ヒューマンドギュメンタリーと言う番組である。
前半戦は、清水寺の襖絵と中島潔の生きてきた時間との関係を取り上げ、画家と絵を掘り下げている。この部分は、クローズアップ現代と重なる。


5年の歳月を掛けて完成した襖絵は46枚で構成される大作である。
 前回は、その中で「大漁」に焦点を当て、中島潔と若くして亡くなってしまった母との心の繋がりを描いたため、他の襖絵は画面に多くは登場しなかった。


今回は、全てではないが、大漁以外の襖絵も紹介された。
これは、良かった。
特別展示は8月にも行われたようだが、次回は何時展示されるのだろうか。


 


 



 


 
向かって泳いでくるいわしの大群を見つめる少女は、鰯の一匹一匹の命を見つめている。
 先頭の鰯の眼には月の光が宿り、天に向かって泳いでいく。


クローズアップ現代と同じように、若くして亡くなった母への満たされぬ愛と妻の死からわずか2ヵ月後に再婚した父への憤り。
 故郷を捨て家を飛び出し、温泉堀の仕事をしながら絵の勉強を独学した中島にとって故郷は悲しみと怒りの場所だった。


中島は本の挿絵等を描いたが、画壇から認められることはなかった。若い時代は個展を開くことができないほど絵の世界でも無視され続けた。



これらの原体験が中島の絵に常に色濃く滲んでいる。



風に吹かれている儚げな少女は中島の投影。


 
常に側にいる子犬の「うめ吉」は中島の母親ウメ子の分身。


 
画面に漂う郷愁は、悲しみと怒りの場である故郷への満たされぬ感情。



番組の後半は、クローズアップ現代の後を取り上げている。
5年に及ぶ襖絵に精力を使い果たした中島は完成間際体調の不調を感じていた。


人間ドッグを受診した中島は肺に影があることを告げられ、精密検査を受ける。
 結果は肺がんだった。


鰯や動物に仮託して生命を描いてきた中島は、がんの宣告を受け自分の命を見つめることになった。


右の肺1/3を切除する大手術をうける際、胸の切開により右手にしびれの後遺症が残る可能性があることを医師から告げられる。
 右手は画家の生命である。
中島は、カメラにつぶやく、生きているうちには色々なことがある。


麻酔から覚め、呼びかけられた中島は、右手が動く動いていると酸素マスクを着けたまま話す。




 
手術が無事終わり、転移が無かった中島は病室の窓から空を眺める。
 あの夏の雲のように力強いものを描かなければいけないと考える。


1ヶ月後まだ手術の痛みの残る右腕で、雲の絵を描きはじめる。
完成した絵が下の「空」である。

 
少女が見つめる夕焼け空と雲。
朝には夜が来る。夕焼けには明日が来るという。


峠に立つ少女の構図は、生きることの困難さも描いている。
中島は言う。
峠は登っているときは、空まで続いているように見える。だが、登りつめると、其処は空ではなく、下りの道が始まり、次の峠に続いていく。
 峠も生きることと同じように厳しいもの。



生前母に報いることができなかった中島は「大漁」を母に捧げて思いを遂げ、再婚した父親を許すことができずこだわり続けた自分の愚かしさに気づいた中島は生きることはどうしようもないものだと語る。


嘗て悲しみと怒りの場所でしか無かった故郷・佐賀に帰り、母の墓参と手術のために延期になっていた母校の小学校を訪れる。



 
子供たちに、中島は大切なことを2つだけ話しますと言う。
・優しいこと
・人の気持が解ること
この二つが出来れば、生きて行くことに負けることはない。


 
家を飛び出し、故郷を捨てたとき、中島はこの海岸から、母へ書いた手紙を投げた。


その海岸にたって、故郷の海と空を見上げる。
故郷の海は全部空と一緒になるといい、スケッチブックにデッサンを始める。


次のモチーフは、故郷の海と空。
中島は、襖絵の峠から次の峠にまなざしを向け始めた。
そこには、一体となった海と空が大きく広がっている。



 


中島の語る峠の話を聞いていて、長谷川きよしの「古坂(いにしえざか)」を思い出した。
目に浮かぶイメージは絵も歌も同じだ。



『古(いにしえ)坂
   作詞 寺井玲子
   作曲 長谷川きよし


古坂を荷車ひいて
男が一人 登って行くよ
もう少しで 坂を登りつめて
向うへ 下りて行く
もう 見えなくなった
荷車のあとを 風だけ吹いて
追いかけて行く


あの峠の向うは
瀬戸の蒼い海か 讃岐の山か
いつも見てる あの女の子は
向うへ行きたいのだろう
古坂は 風だけ吹いて
地蔵も寒いと 泣いているだろう


あなたは 向うへ下りて行く
わたしは こちらを下りて行く
古坂を下りて行く


外食餅売りが長い売り声を
休めて 汗をふき
海を見てみようと 腰をおろした
樹陰の小さな岩場
スニーカーの女の子
六百年の樹陰だ


粋に別れた あいつと別れた
もう馴れっこの わたしが
粋に別れた


笑って別れた 娘と別れた
野良仕事に行く父親が
笑って別れた


仕方がないと 小町と別れた
粋な旅役者が 仕方がないと
別れていった


だまって別れた 姉さんと別れた
解散した子分どもが
だまって別れた


泣き泣き別れた お父と別れた
身売りの娘が
泣き泣き別れた


秋風の吹きはじめた
古坂を みんなそれぞれ
別れていった


からすが一羽 枝にいた
すずめも 二、三羽 枝にいた
古坂の古松に
ひからびた蛙も枝にいた


古坂なんて どこにもない峠
そのくせ みんなが知ってる峠
だってね みんなそれぞれ
あなたの中の
古坂を 越えて行くのさ』



古坂は、Youtubeでは登録が無く聞けないが、以下で一部だけ視聴できる。


http://www.7netshopping.jp/cd/detail/-/accd/1300353847



 

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最終更新日 : 2019-03-15

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