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  • 2018年03月 の記事一覧

2018年03月31日(土) 記事No.500

2018/03/31 () 旧暦:215日 祝日・節気: 望 日出:529分 日没:1801分 月出:1744分 月没:526分 月齢:13.58 干支: 壬戌 六曜: 仏滅 九星: 二黒土星

今日のあれこれ: 枝垂桜

「東京桜散歩 椿山荘 雨の庭園 枝垂桜が雨にぬれる 2014.4.3 Chinzan-so Garden


https://youtu.be/zaeG1MeCa1c



『枝垂桜
・薔薇(ばら)科。
・学名
Prunus pendula
Prunus : サクラ属
pendula : 下垂する、
つり下がる

Prunus(プラナス)は、
ラテン古名の
plum(すもも)」が語源。
学名P


・開花時期は、320 420頃。
3月下旬頃から咲き出すものと、桜より少し遅れて4月5日頃から咲き出すものとがある。
(一重のものは開花時期が早く、八重のものは遅いようです)。
・長い枝を垂れ下げ、その先端にたくさん花をつける。
八重のものもある。
とにかくきれい♪

・「八重紅枝垂
(やえべにしだれ)」とか「紅枝垂(べにしだれ)」など、品種いろいろ。
ちなみに、春に紅葉するモミジにも同じ「紅枝垂(べにしだれ)」という総称がついている。
→ 紅枝垂 へ


・梅にも枝垂梅というのがある。

・なぜ枝が垂れるのか、
という研究をしているグループ があり、「枝は伸びると 重力によって下に垂れそうになるが、ふつうの植物にはそれに打ち勝つだけの復元する力があり上(太陽)に向かって伸び続ける。
しかし枝垂桜はその力が弱く、人間が支え木などをして 育てていかないと大きくならない」との見解を出している。』
(季節の花300)



枝垂桜の俳句:



・極楽寺枝垂桜の傘に入る  加藤サヨ子



・しだるるは雨脚枝垂桜かな  稲畑汀子



・まつ直ぐに雨降る枝垂桜かな  山尾玉藻



・雨しとど枝垂桜を伝ひ落つ  古賀貞美



・雨傘に枝垂桜の重さかな  荒井和昭





今年は、桜の開花時期から良いお天気だった。
花に雨のお天気は今年は無かった地域が多い。

俳句を読んでいると、枝垂桜には雨が詠まれている句がある。
染井吉野と比べ開花時期が少し遅いので、雨の降ることも多いだろう。
また、雨でも花は簡単には散らず、雨の風情が楽しめるようだ。
染井吉野が終わり、雨が降ったら枝垂桜を求めて歩くのが良さそうだ。





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2018年03月30日(金) 記事No.501

2018/03/30 () 旧暦:214日 祝日・節気:  日出:531分 日没:1800分 月出:1640分 月没:449分 月齢:12.58 干支: 辛酉 六曜: 先負 九星: 一白水星

今日のあれこれ: 囀り

「ホオジロの囀り7


https://youtu.be/OWQLRzddCM8



『囀(さえずり、さへづり) 三春
子季語: 囀る、鳥囀る
関連季語: 鳥交る
解説: 春、鳥たちは繁殖期を迎え、恋の歌をうたう。これが囀。鳥の鳴声は四季を通して聞くことができるが、季語としての「囀り」は春の求愛の鳴声のこと。
来歴: 『世話盡』(明暦2年、1656年)に所出。

(季語と歳時記)



囀の俳句:



・永き日も囀り足らぬひばり哉 松尾芭蕉



・水まさる余呉囀のあるばかり  坂井建



・草千里光りとどめて囀りぬ 太田蘆青



・思ひきり愛されたくて囀りぬ 吉井弥生



・溢れたる囀りのものぐるほしき 中田剛





鳥の囀りは、春が来て異性を求める求愛行動だそうだ。
芭蕉も朝から晩まで只管囀っているひばりを詠んでいる
ひばりにしてみれば、相手が認めてくれるまではおいそれと止めることなで出来はしない。目的を達するまでは、初志貫徹あるのみだ。

動物の世界で異性に認めて貰う方法は、パワーである事が多い。ライオンにしても猿にしても自分が一番強いことを証明できれば、ボスとしての気配りは必要としても、異性に求愛することができる。
周囲・相手が認める腕力・パワーが求愛の要になる
人間の場合も、モテる要素にパワー的要素もある。逞しく広く厚い胸に気を引かれる女性もいる。人間の場合は、パワー的要素以外の要素も重要だ。頭脳、学歴、地位、収入、財産など色々とある。
囀りではないが、声が良い男性に惹かれる声フェチの女性もいる。あの声で愛を求められてみたいという思いもあるらしい。

モテる条件が、鳥の場合は囀りの音色だとすれば、力づくとは違って、平和的で美的だ。
美しく鳴いても餌が獲れなくても良いのなどと心配するのは要らぬお世話だろう。
矢張り春には美しい声で、長い日をひがな鳴き続けるのが良いのだ。




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2018年03月29日(木) 記事No.502

2018/03/29 () 旧暦:213日 祝日・節気:  日出:532分 日没:1759分 月出:1534分 月没:410分 月齢:11.58 干支: 庚申 六曜: 友引 九星: 九紫火星

今日のあれこれ: 土筆

「里山散歩 雪解のあとの土筆など 20183224K)」


https://youtu.be/Bek0REjLerw



『土筆(つくし) 仲春
2011/02/04

【子季語】つくづくし、つくしんぼ、筆の花、筆頭菜、土筆野、土筆摘
【解説】筆和、土筆飯、土筆汁トクサ科の多年草。杉菜の胞子茎をいう。三月ごろから日のあたる土手や畦道に生える。筆のような形をしているのでこの名がある。
【科学的見解】土筆は、スギナというシダ植物の胞子葉の部分をさす。春先、土壌中にある地下茎から胞子葉が伸び、地上に出たあとは茎を伸ばし先端から胞子を飛散させる。その後、遅れて細く尖った松葉状の葉(栄養葉)を出し、活発に光合成を行う。スギナは、在来の植物で、北海道から九州まで分布する。土筆は、食用となり、春の山菜として昔から親しまれている。(藤吉正明記)』
(季語と歳時記)



土筆の俳句:



・陽を纏ふ千本立ちの土筆摘む  垂水イツ子



・緑の頭に亀甲の罅土筆たち 田川飛旅子



・話しつつ土筆の袴むいてをり  谷村幸子



・卵とぢ土筆の旬でありにけり  稲畑汀子



・椀種に土筆ありけり昼御膳  岡和絵




春の陽に誘われて、外に出る。
暖かそうに輝いている川の土手に立ってみると土筆が此処にもあちらにも生えている。

土筆を採り始めると手が止まらない。
時を忘れて夢中になると、いっぱい採れてしまう。
家に帰り、袴を取ると大変な作業になる。
折角採ったのだから全てと思ってしまう。
少しにして余りは他の人に分ければよいのだ。

卵とじの土筆のほろ苦さが春を感じさせる。
量は少なくても春を感じれば土筆はそれで充分だ。





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2018年03月28日(水) 記事No.503

2018/03/28 () 旧暦:212日 祝日・節気:  日出:533分 日没:1759分 月出:1428分 月没:328分 月齢:10.58 干支: 己未 六曜: 先勝 九星: 八白土星

今日のあれこれ: 田楽

「豆腐田楽が美味しく焼けていきます」


https://youtu.be/_mQO-CYvfVU



『木の芽田楽(きのめでんがく) 三春
子季語: 田楽豆腐、田楽焼、田楽刺、田楽
関連季語:
解説: 山椒の若芽を木の芽といい、これを擂りつぶし味噌と混ぜ、長方形に切った豆腐に塗り焼いたもの。緑が美しく香ばしい。
来歴: 『守貞漫稿』(嘉永6年、1853年)に所出。
』(季語と歳時記)



田楽の俳句:



・田楽に山川晴れて来たりけり 鈴木鷹夫



・迎へられ菜めし田楽友五人 松崎鉄之介



・酒をかむ木の芽田楽一人前 根津洋子





葉山椒の芽が膨らんだと思ったら、突然弾けて芽吹いた。
小さな若葉が伸び始めるのは時間の問題だ。

先日の宴で、朴葉みそに蕗の薹を添えて春を楽しませていただいたが、木の芽の季節も間近だ。

豆腐の協調性は抜きん出ていることは間違いない。
田楽味噌と木の芽のコラボレーションに豆腐が加われば春の香りが立ち上がる。

春の陽と木の芽田楽とは切ることができない縁がある。
春の陽を身体に感じれば、木の芽田楽を求めて出かけたくなる。

気のおけない仲間と行くのも良い。
家族で行くのも良い。
勿論、二人で行くのも問題ない。

独り、酒を噛み、木の芽田楽を口にする根津女史。
お主、春の楽しみ方を知っている。





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2018年03月27日(火) 記事No.504

2018/03/27 () 旧暦:211日 祝日・節気:  日出:535分 日没:1758分 月出:1321分 月没:240分 月齢:9.58 干支: 戊午 六曜: 赤口 九星: 七赤金星

今日のあれこれ: 苗木市

「【4K】たうんニュース20183月「第116回松山植木まつり」」


https://youtu.be/n74tM4R3mas



『苗木市: 苗市、苗木売
仲春
三月から四月にかけて苗木を植えるよい時期である。庭木や果樹などの苗木が寺社の縁日の市で売られる。近頃は大型店舗の屋外でも市が立ち、野菜の苗等と共に売られる。』
(季語と歳時記)



苗木市の俳句:



・奥多摩の山見えてゐる苗木市 皆川盤水



・苗木市山の匂ひの樅を買ふ 小林黒石礁



・苗木市蝶の止まりし鉢を買ふ 横畑順美




春の陽が降り注ぐ時期になると、此処其処で苗木市が開かれる。
地域恒例の大規模な植木市も開催されるし、神社の近くやスーパーマーケットの駐車場でも思いがけないく通りがかったりする。

ふらりと寄ってみたくなる空気が流れているのか、自然に足が向いてしまう。
食虫植物に吸い寄せられる虫のように、中に入ってしまえば逃れることはできない。

目のさめるような鮮やかな色の花々が春の光を輝かせながら迫ってくる。実をつけた苗木が連れて帰ってと語りかけてくる。
花も木も生き物で世話をするのは簡単ではないのだが、そんな事も忘れて、気がつくと苗をぶら下げて、果たし得ぬ夢を見ながら歩いている。

庭土との相性もあるのか、柑橘類は根付いたが、花桃、桜桃は枯れてしまった(枯らしてしまった)。

ゴーヤーだってと言ったら怒られるが、実を多くならせるのは簡単ではない。
少なくとも日除けカーテンにはなるので、それで良いのだが。

蝶の泊まった鉢には、その後も蝶は止まってくれているのだろうか。

また、植木市が始まる。





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2018年03月26日(月) 記事No.505


卒業式は終えたが、月末までは中学生の藤井六段が最後の中学生の日々を充実させている。
今日は、詰将棋解答選手権チャンピオン戦で午前も午後も100点満点でぶっちぎり優勝。

詰将棋とプロの実践は違うそうだが、先日の糸谷八段との試合の最後の詰めは詰将棋さながらで、藤井六段の場合は詰将棋が実践の中に生きていることを目の前で見せてくれた。

新年度もさらなる高みを目指して、タイトル獲得とV5にチャレンジし、実現する。

藤井六段の毎日は、普通人とは違って毎日が大記録だ。



『藤井聡太六段 100点満点で大会初の4連覇 詰将棋解答選手権チャンピオン戦
03
25 16:13スポニチアネックス

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「詰将棋解答選手権」に出場した藤井聡太六段。後半開始後、わずか1分半で解答を書き始めた
(
スポニチアネックス)

将棋の中学生棋士、藤井聡太六段(15)が25日、名古屋市内で開催された「詰将棋解答選手権チャンピオン戦」に出場し、全10問正解の100点満点で大会初の4連覇を達成した。


将棋の終盤力を鍛える詰め将棋は藤井が幼少期からのめり込み、数々の記録を達成してきた強さの原点でもある。藤井は前半、全3会場で最速の55分で回答を終え退室、5問全てに正解で単独トップに立った。時間に関係なく全問正解なら優勝できる後半は、慎重に時間を使い切り念入りに確認する勝負師らしさも見せながら“ラスボス”と呼ばれる最難関の第10問もクリア。12歳で初優勝した2015年以来、自身2度目の100点満点を叩き出し、2位以下を大きく引き離した。

競技は前後半各90分で、39手詰以内の詰め将棋を解く正確さと速さを競う。1問10点、前後半各5問の100点満点。15回目の今年は東京、大阪、名古屋の3会場に分かれ、プロ棋士をはじめ奨励会員、アマチュアら105人が同じ条件で出場した。谷川浩司九段(55)、行方尚史八段(44)、広瀬章人八段(31)らトッププロも参加している。』
(スポニチアネックス)



『100点満点で詰将棋選手権V4の藤井聡太六段「今年はまったく自信がなかった」
03
25 17:24スポーツ報知

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詰将棋解答選手権のチャンピオン戦で史上初のV4を決め、賞状を手にする藤井聡太六段 【報知新聞社】(スポーツ報知)

25日に全国3会場で開催された「第15回詰将棋解答選手権」のチャンピオン戦を100点満点で制し、大会史上初の4連覇を達成した藤井聡太六段(15)が名古屋会場で会見した。


2011年に初参加し、小学6年だった15年からのV4。「毎年楽しみで参加しているので、プレッシャーはなかった。今年も素晴らしい作品に出会えてうれしく思います」と、詰将棋の作者に感謝した。「来年もぜひ出たい」と5連覇を目指す意向だ。

谷川浩司九段(55)ら一流プロから、奨励会員、アマなど過去最多105人が参加した。「最近、たまたま(詰将棋を)解くことがなく、どうかなという不安もあった」「今年はまったく自信がなかった」と話したが、結果はただ一人の100点満点。全問正解は15年の初優勝時以来、自身3年ぶりだった。

大会は各90分間の2ラウンド制(5問ずつ)で、藤井六段は第1ラウンドを55分で終了して会場の外に。4問までは20分で解答したが「特に5番(5問目)が難しかった」。第2ラウンドは、関係者によると51分で終了したが、会場内で時間いっぱい入念にチェックしていたという。関係者が“ラスボス”と称する最難問の10問目も「難解でしたが、時間的に余裕があったので、変化を確認できた。だいたい合っているかなと思いました」と振り返った。

詰将棋については「最近は上達法としてはやっていないですが、三手、五手詰みで始めた頃はたくさん解いて、基礎になったと思います」。22日の公式戦で元竜王の強豪・糸谷哲郎八段(29)をたたみ込んだ寄せを実行委員長の柳田明氏(61)から称賛されると「あのような詰みが実戦で見えるのは、なかなかないケース。ああいうのが見えると気持ちいい」と笑顔で話した。

準優勝は、2004年の第1回からの3連覇など6度の優勝経験がある宮田敦史六段(36)で、94点だった。』
(スポーツ報知)



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2018年03月26日(月) 記事No.506

2018/03/26 () 旧暦:210日 祝日・節気:  日出:536分 日没:1757分 月出:1216分 月没:147分 月齢:8.58 干支: 丁巳 六曜: 大安 九星: 六白金星

今日のあれこれ: 誓子忌

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(山口誓子記念館
http://www.office.kobe-u.ac.jp/ksui-yamaguchiseishi/
より転載




『誓子忌
仲春
           .
俳人山口誓子(一九〇一~一九九四)の忌日。三月二十六日。京都市生まれ、本名は新比古(ちかひこ)。「ホトトギス」の四Sのひとりに数えられ、新興俳句運動で先導的役割を果たした。即物象徴による硬質な叙情世界を開拓。「天狼」を主宰。句集『凍港』『炎昼』など。』
(季語と歳時記)



誓子忌の俳句:



・誓子忌の夜は万蕾の星となれ 鷹羽狩行





晩年の誓子の好みの句ではないかもしれないが、誓子の静謐で、広がりがあって、輝きもあって美しい世界を再現していると思う。



【データ】

山口誓子
Wiki
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E8%AA%93%E5%AD%90




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2018年03月26日(月) 記事No.507


山口誓子は大家であり、人気もあるのでネット上で読むことができる句は多い。

すべて集めることは今回はできなかった。
一部でも900句近くあれば、誓子の世界を知ることはできるだろう。

(頭の数字に意味はなく、単なる番号に過ぎない。)


1  いつも忌に横顔の子規老いし子規
2  かの巫子の手焙の手を恋ひわたる
3  海人の子と思ひ焚火のとびかかる
4  熊の子が飼はれて鉄の鎖舐む
5  籾山に乗りて沈みて子は遊ぶ
6  白鷺に子ありて秋の水に彳つ
7  蹠の白きまで子の寝冷して
8  猫の子が道の一町先へ来て
9  子に靴を穿かすインバネス地に触り
10  子を探しに出でてむなしく夏の浜
11  浴衣きて生業はなれたり舸子が妻
12  これはさて入學の子の大頭
13  蜑の子や沖に短かき一夜寝て
14  いなびかり終に子のなき閨照らす
15  げぢげぢよ嫌ひを匐ひまはれ
16  塔中の僧門の子に星まつり
17  廻廊を鹿の子が駆くる伽藍かな
18  聖病院夏の夜あけに子を賜ふ
19  親雀書屋の簷に入る
20  子雀を盗るにはあらず梯出す
21  初神楽太く神慮に叶ひたり
22  初富士の鳥居ともなる夫婦岩
23  初凪の一湾海の門まで見ゆ
24  落葉松は直幹落葉しつくして
25  生きてゐる牡蠣その殻のざらざらに
26  浮く鴨に志賀のさざなみ細かなり
27  金色の御堂に芭蕉忌を修す
28  白孔雀白鮮かな木の葉髪
29  学問のさびしさに堪へ炭をつぐ
30  手袋の十本の指を深く組めり
31  黒マント角ばりしもの中に負ふ
32  冬河に新聞全紙浸り浮く
33  雪の富士高し地上のものならず
34  大日輪霧氷を折りて手にかざす
35  海に出て木枯帰るところなし
36  寒き光芒吾に見えざる海照らす
37  冬ざれの塩田を踏む許得て
38  たづさふや竜胆折りし妹が手を
39  芦折れて立つ真直ぐなるものは佳し
40  石炭の尽きし山々紅葉せる
41  林檎樹下病める林檎の集められ
42  夕鵙によごれし電球の裡ともる
43  大文字第一画の衰へそむ
44  七夕や天皇の御名を書しまつる
45  遠き世の如く遠くに蓮の華
46  桐咲けり天守に靴の音あゆむ
47  山窪は蜜柑の花の匂ひ壺
48  蝿たかるとも闘牛の眼を据ゑて
49  鯉幟富士の裾野に尾を垂らす
50  離宮内にて麦藁を焚く猛火
51  白扇を捨てて手だけになりて舞ふ
52  葭戸過ぎ几帳も過ぎて風通る
53  太宰の碑濡らせしビール頒けて飲む
54  火口ちかし降りし氷雨に手を衝たる
55  吾の航く天に峯雲堵列せる
56  激流に棹一本の若布刈舟
57  枝垂桜垂れて疎水の水にまで
58  唐太の天ぞ垂れたり鰊群来
59  大阪駅大峰行者突つ走る
60  流氷や宗谷の門波荒れやまず
61  潮音寺春潮の音聞く寺か
62  近づくにつれ塔重き春の暮
63  歳晩やトラック滴るまで洗ふ
64  樹氷凝る汝は何の木と知れじ
65  足袋穿くを見下し妻を葬に遣る
66  吸入器地獄のごとく激すなり
67  鼻長きキリスト吾は水洟かむ
68  風邪の妻起きて厨に匙落す
69  煖房や株主集ふ椅子を置く
70  街道に障子を閉めて紙一重
71  読みちらし書きちらしつつ冬籠
72  いとどしき猟夫の狐臭炉のほとり
73  おでん酒酌むや肝胆相照らし
74  鋤焼の香が頭髪の根に残る
75  ラヂオより拍手万雷芝枯らす
76  群りて鳥に過ぎざる浮寝鳥
77  やがてわが炊煙も出て冬霞
78  大いなる古創顔にこれの鷲
79  芭蕉忌の選して御堂筋が見ゆ
80  斧あてし枝の切口冬に入る
81  刃を入れて滴る血なし猪の肉
82  蟻死してかかる事にも秋深む
83  海鳩の群れて栴檀実生る頃
84  稲扱きの古き機械を野にさらす
85  高稲架の上の上から穂を垂らす
86  ゐのこづち人のししむらにもすがる
87  宮後や鉄路に椎の実を拾ふ
88  草の絮わがてのひらを発ち去れり
89  蘆の花舟あやつれば水匂ふ
90  あけびの実餅なり種のある餅なり
91  乳を吸ひぐみの実の渋きをも吸ふ
92  無花果を食ふ百姓の短かき指
93  身辺に割けざる柘榴置きて愛づ
94  鶇死して翅拡ぐるに任せたり
95  鵯海をわたらむとして木に射たる
96  はたはたはわぎもが肩を越えゆけり
97  石橋の蝗や野川とどまらず
98  眼のなかの秋の白雲あふれ去る
99  爽やかやたてがみを振り尾をさばき
100  稗草は飽かぬ草にてコップに挿す
101  一握となりし間引菜飯を食ふ
102  はじかみを切りし刃物も厨の夜
103  太刀魚の曲りたる太刀漁夫が持つ
104  立ちながら身丈測らる秋袷
105  秋の蚊を払ふかすかに指に触れ
106  わがからだぬくとしとまる秋の蝿
107  とぶものはみな羽ひびく秋の蝶
108  毒ありてうすばかげろふ透きとほる
109  見られたり芋虫を踏みにじれるを
110  地虫鳴くこゑ地中にてとぎれつつ
111  秋の夜を生れて間なきものと寝る
112  颱風のあとや日光正しくて
113  南瓜の葉紙か何かのごとく踏む
114  木鋏の縁にひびきて秋の雷
115  法師蝉眼鏡外して聞きゐたり
116  送り火やよもの山扉は空に満つ
117  墓参より帰りて海女の褌ひとつ
118  老の海女盆に短かく髪刈れり
119  索道の石炭落す麻畠 山□
120  妻も濡る青き蕃茄の俄雨
121  手花火に妹がかひなの照さるる
122  幻燈会林間の学舎椅子を貸す
123  開放の夏期大学を覗くもの
124  没りし日に白き昆虫網ゆける
125  夕焼けて西の十万億土透く
126  肺強く鳴って老農昼寝せり
127  炎天の遠き帆やわが心の帆
128  帆を以て帰るを夏の夕とす
129  冷し馬馬首ともすれば陸に向く
130  十二時を宵のごとくに旅の端居
131  噴水の穂さきもう行きどころなく
132  キャンプ寝て太白西に落ちゆけり
133  兜虫一角風を切つてとぶ
134  金亀虫松の鉄幹立ち並び
135  一点の偽りもなく青田あり
136  この町の電車をかしや山開
137  まだ誰も憩はず海の葭簀張
138  脂多き百足虫を踏みにじりたり
139  流水に真紅うつらず蛇苺
140  刈草を負ひて歩幅を制せられ
141  木の暗を音なくて出づ揚羽蝶
142  夏つばめ遠き没り日を見つつゐる
143  青嵐電車の音と家に来る
144  蟻地獄砂の切味あざやかに
145  油虫にぶくなりしをもう追はず
146  蟷螂の斧をねぶりぬ生れてすぐ
147  刺されたる*えい泣きゐしがしづまれり
148  水楊浮巣に卵なかりけり
149  腰たるき百姓歩む代田べり
150  紫蘇壷を深淵覗くごとくする
151  月の出の黄なる海へと蟇すすむ
152  杜に入る一歩に椎の花匂ふ
153  海荒れに汐汲む海女や栗の花
154  穀象のゐる米少し踏み通る
155  茫々と麦生つづけり胸の病
156  燈台がともる海亀縛られて
157  薔薇熟れて学課けだるくなりまさる
158  芍薬を嗅げば女体となりゐたり
159  豌豆の実のゆふぐれに主婦かがむ
160  みつけしは非番の厨夫蜃気楼
161  土蜂や夕日の弱き頃をとび
162  春の蚊の燈のほとり過ぎ顧みず
163  春賑のわが身をくぐる浪の音
164  遠足の女教師の手に触れたがる
165  大学の空の碧きに凧ひとつ
166  強風に吹かれて麦と吾青し
167  孕み鹿肘にて起ちしことも見る
168  雀の巣われは田草の穂を手にす
169  巣燕に外は鏡のごとき照り
170  海女行けば寄居虫ずり落つ忘れ潮
171  岩の間に手をさし入れて磯遊び
172  観潮船ふつと白煙音とならず
173  春潮やわが総身に船の汽笛
174  伊勢湾口大なる春の海会す
175  さくらを吹き且つ神将を吹きとほる
176  春の月海ある方へ犬走る
177  おうおうと男掛声都踊
178  春の日やポストのペンキ地まで塗る
179  紅斑ある虎杖思ふのみに酸し
180  はこべらを小鳥にやりし手で物食ふ
181  うまごやし炭坑の娼婦帯を結ばず
182  紫雲英田の濃きも淡きも花盛
183  早蕨や裾田ひかりてよき日和
184  俎の蓬を刻みたるみどり
185  炉塞ぎて小暗き時をなほ刻む
186  水中界蜷の徐行のつづくなる
187  春山やわが手ぢからにゆるぎ岩
188  東風の船汽笛真白く吹き止めず
189  鳴門より抽き出す長き若布刈竿
190  この町を愛せば駅の土手青む
191  星はみな西へ下りゆく猫の恋
192  解けぬ雪月光ほしいままにさす
193  麗しき春の七曜またはじまる
194  スケートの紅緒紅顔の美少年
195  氷の窓に冥き海ぞも氷下魚釣る
196  氷海やはやれる橇にたわむところ
197  風雪にたわむアンテナの声を聴く
198  直立のスキーに手掛け立ち憩ふ
199  雪敷きて海に近寄ることもなし
200  悴む手女は千も万も擦る
201  髪長く神を慰む初神楽
202  寒造り渚の如く米沈む
203  瑞気とはこれ初釜を昇る湯気
204  正月の太陽襁褓もて翳る
205  置火鉢青畝も居ずなんぬ 中西夕紀
206  杖にして主婦が買ひ来し砂糖黍
207  葉月潮伊雑の宮をさしてゆく
208  秋の海深きところを覗き過ぐ
209  花野には岩あり窪あり花ありて
210  秋山に秋山の影倒れ凭る
211  やさしさは殻透くばかり蝸牛
212  赤*えいは毛物の如き目もて見る
213  始めての土地に夏足袋黒く来ぬ
214  蟻のぼる病のセルの黒きのみ
215  洞窟の滴り髪に撫でつける
216  噴井あり学ぶ吾等のために噴く
217  橋脚に水引つ掛かる出水川
218  地の土は高嶺の土のお花畠
219  雪渓が直立峰の高ければ
220  反り返り先の尖れる夏の富士
221  伊賀上野蘇枋の花を以て古ぶ
222  流し雛冠をぬいで舟にます
223  競漕の空しき艇庫潮さしぬ
224  高きより雪崩れて最上川塞ぐ
225  伊吹嶽残雪天に離れ去る
226  苗代の密生密の密なるもの
227  春の海四角の黒きもの沈む
228  春水と行くを止むれば流れ去る
229  枯草に午笛のながき尾が隠る
230  楡枯れぬ露西亜軍楽隊いまはなき
231  血潮濃き水にしなほも鰤洗ふ
232  鰭強く刎ねゐし鮪の腸を抜く
233  鮪(しび)の船水平線を突き上ぐる
234  凍鶴は夜天に堪へず啼くなめり
235  鶴ころこ鷲かんかんと啼いたりき
236  雌の熊の皮やさしけれ雄とあれば
237  さかり場に鉄骨立てり近松忌
238  除夜の鐘吾身の奈落より聞ゆ
239  飾り太刀倭めくなる熊祭
240  ラグビーの巨躯いまもなほ息はずむ
241  スケートの紐むすぶ間も逸りつつ
242  長袋先の反りたるスキー容れ
243  夜番の柝この世の涯に聞えつつ
244  水枕中を寒柝うち通る
245  聖霊の御名に由り石炭を焚き添ふる
246  煖房に鍵盤を白く蓋せざる
247  乾鮭の下なることにこだはれり
248  こころ吾とあらず毛糸の編目を読む
249  冬帽を火口に奪られ髪怒る
250  映画館裘匂ひ穢土なるや
251  冬服の衣嚢が深く手を隠す
252  年木割つて少年の手の痛かりけり
253  氷海や船客すでに橇の客
254  凍港や旧露の街はありとのみ
255  月食の夜を氷上に遊びけり
256  霜柱枕辺ちかく立ちて覚む
257  沿ひ行けば夜の雲うつる冬の川
258  克明に提灯うつる冬の水
259  枯れし苑磔形の釘錆流す
260  おほわたへ座うつりしたり枯野星
261  汽車とまり遠き雪嶺とまりたり
262  冬の雷家の暗きに鳴り籠る
263  燦爛たる霧水の原に麺麭を食ふ
264  磐石をめがけて霰降り集ふ
265  虎落笛叫びて海に出で去れり
266  寒星はただ天に倚る海の上
267  月光は凍りて宙に停れる
268  呼ぶ母にこゑは応へず寒の暮
269  初冬やシャベルの先の擦り切れて
270  菌山天の直下に飯を食ふ
271  茸山の白犬下り来るに逢ふ
272  けふの日の終る着物に草虱
273  いのこづちひとのししむらにもすがる
274  萱を負ひ雀色時おし黙る
275  むつかしき牛の眉間や稲の秋
276  薄暮にてとろろの薯を擂りゐたり
277  木実青かりし昨日のけふとなる
278  三室山桑の葉黄ばむ道来れば
279  九年母や土傷つくる馬の蹄
280  柿を食ふ君の音またこりこりと
281  芋虫のしづかなれども憎みけり
282  秋の蜂梳らざるわれにとぶ
283  暗き雁暗きすばるを見て帰る
284  われありと思ふ鵙啼き過ぐるたび
285  蹤き来る妹には告げぬ秋の蛇
286  古びたる午下の日輪川施餓鬼
287  七夕や真赭(まそほ)の地獄湧きたぎつ
288  あとの闇しづまりかへり鰯引
289  稲扱機音し暮天にはばからず
290  蜑びとの海に障子を洗ふころ
291  とろろ汁吾に齢の高さなし
292  運動会庭の平を天に向け
293  秋の田の只中石の鳥居暮る
294  露の花圃天主を祈るもの来る
295  踏切の燈にあつまれる秋の雨
296  ひもじきとき鉄の匂ひの秋の風
297  ひややけき空気に秋日さしゐるも
298  走る蟻ことしの秋も深むらし
299  枕辺に眼鏡を外す夜寒かな
300  蜂死して十月の峰天聳(そそ)る



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2018年03月26日(月) 記事No.508


301  仲秋や漁火は月より遠くして
302  終に苦しかやつりぐさの錯粽は
303  隙なき青の密生藺と思ふ
304  身の懈さ著莪も蜥蜴も照りいづる
305  鬢白くして生きのこる草いきれ
306  老農の喰はず携ふ真桑瓜
307  真桑瓜農夫跼みて味ふも
308  喪の花環ミモザをはじめ既に萎ゆ
309  アカシヤの晩晴花を桶まで
310  磔像や泰山木は花終んぬ
311  薔薇熟れて空は茜の濃かりけり
312  百足虫出づ海荒るる夜に湛へがたく
313  あけがたのひかりに蚤を殺したり
314  蚊とんぼの必死に交む一夜きり
315  空蝉を妹が手にせり欲しと思ふ
316  臥して聞けば初蝉海に沁みわたる
317  水隈にみづすましはや暮るるべし
318  穀象が出て大日を畏めり
319  玉虫の雌はとまれども雄はとぶも
320  髪切虫逆髪立てて風に飛ぶ
321  蛍火の流れ落ちゆく荒瀬見ゆ
322  夏虫の硬翅空ゆき日は白き
323  蜂もどりては音もなく巣をつくる
324  舟虫の猜ひ深き日本海
325  赤*えいの広鰭潮を摶ち摶てる
326  ゆるやかな水に目高の眼のひかり
327  杜を過ぎ杜を過ぎ鷺白さ増す
328  はばたける朱き腋見ゆ羽抜鶏
329  汗疣の背罪を犯せしごと思ふ
330  行楽の日焼は撫でて消ゆるほど
331  少年の跣足ひびきて走りをる
332  高原の裸身青垣山よ見よ
333  蛍籠極星北に懸りたり
334  蓮見舟*えりの潰えを路とする
335  ナイターに見る夜の土不思議な土
336  滝浴びのまとふものなし夜の新樹
337  沖に出て泳ぐ黒髪かと思ふ
338  泳がむとすすむ乳房の浪隠る
339  菜殻火のこの距り旅愁といはむ
340  早乙女の裾を下して羞ぢらへり
341  みめよくて田植の笠に指を添ふ
342  曝書にほふ性に眼覚めし頃のにほひ
343  蚤取粉黄なるをふりて寝入りたり
344  いねながら蚊帳の月光掌にすくふ
345  水盤のぐるりに月を滴らす
346  影となりて茶屋の葭簀の中にをる
347  勢ふ噴水中を貫くものあるなり
348  老婆歩きつつ甚平に手を通す
349  幻燈会林間学校椅子を貸す
350  開け放す夏季大学を覗くもの
351  泉川いとけなき咳こんこんと
352  地獄見て憤ろしも大旱
353  歩を進めがたしや天地夕焼けて
354  妻とあればいづこも家郷梅雨青し
355  青あらし電車の音と家に来る
356  南風の浪桐咲く梢を走りつぐ
357  七月の青嶺まぢかく鎔鉄炉
358  海苔掻きて森より帰り来るごとし
359  青年と腹這ふ前に菫濃し
360  花楓新婚のふたり椅子に揺れ
361  松の花きのふはここに潦
362  生きてまた松の花粉に身は塗る
363  ゆふ空の暗澹たるにさくら咲き
364  昼中の白き刻のみ春の蝉
365  虻翔けて静臥の宙を切りまくる
366  天よりもかがやくものは蝶の翅
367  蟻穴を出でておどろきやすきかな
368  雀の巣藁しべ垂れて日没す
369  親雀鳥毛咥へしよろこびに
370  行く雁の啼くとき宙の感ぜられ
371  蝌蚪曇りなほ三月の日のごとき
372  涅槃の図白きは象の歎けるなり
373  薪能火の粉ついつい火を離る
374  女の雛の髪ほぐれつつ波の間に
375  大和また新たなる国田を鋤けば
376  山焼きや賽の河原へ火のびたり
377  名ある星春星としてみなうるむ
378  春月の海ある方へ犬走る
379  春日を鉄骨のなかに見て帰る
380  春の暮鴉は両翼垂らしとぶ
381  晩春の瀬瀬のしろきをあはれとす
382  初神楽太(いた)く神慮に叶ひたり
383  吹初の高笛雪を降らすかと
384  独楽の紐子等はゆつくり巻いてゐる
385  遣羽子や海原かくすさうび垣
386  遥かなる春著こちらへ来ず曲る
387  大徳寺庫裏深々と名刺受
388  初瀬の駅獅子舞汽車を待てるかも
389  落ち羽子に潮の穂さきの走りて来
390  舟に据ゑ海へ供へし鏡餅
391  年礼に来し木匠の木の香する
392  機関車は裾も湯げむり初詣
393  ちかき田ぞ神の若井をいただける
394  初凪に岬燈台白一指
395  新年の病臥の幾日既に過ぎ
396  察察と寒鴉の翼静臥の上
397  寒雀大仏殿を栖ひなる
398  凍る鐘ひとつびとつの音を異に
399  風花に驚破(すは)一角の日の光
400  静臥位に豊かなる雪降りつづく
401  わが家のいづこか除夜の釘をうつ
402  ぴよつと瓦斯点火この年を忘るゝ会
403  みちのくへ向く芭蕉忌の芭蕉の眼
404  雪虫が胸の高さすぐ眼の高さ
405  焚火の穂よぢれよぢれて常なきなり
406  大根を刻む刃物の音つゞく
407  冬の田に消ゆるピアノの音惜む
408  牡蠣の実の粒粒生ける盛り上り
409  枯蘆の穂は獣毛と異ならず
410  海の鴨あはれまむにもみな潜く
411  皇居にも深落葉道陛下の道
412  東西の鉄路真直ぐに霜置けり
413  闇走る犬猫どもの冬の夜
414  陵さむく日月空に照らしあふ
415  冬ざれの中に角帽あぶらじみ
416  胴太の藁塚最も薩摩らし (薩南)
417  秋刀魚焼く煙の中の妻を見に
418  蟻死してかかることにも秋深む
419  とまりし蛾蘭の花より来向へり
420  くちなはのしづかに失せし魂祭
421  水蜜桃を徒弟が顎にしたゝらす
422  葛の花流人時忠ただ哀れ (平時忠歌碑除幕式)
423  きりぎりすながき白昼啼き翳る
424  法師蝉海へ放ちしこゑをさむ
425  ひぐらしが啼く奥能登のゆきどまり(緑剛崎)
426  秋の燈をひと横切り燈を明るうす
427  鰯船火の粉散らして闇すすむ
428  紅となるべきもの鶏頭に凝りにけり
429  空気銃撃ちし音菊ひやゝかに
430  蜻蛉やとぶ翅触るたのしさに
431  渡り鳥夕日に翳をわきばさみ
432  霧こめて山に一人の生終る
433  屋根瓦光(て)るかそけさも秋の雨
434  立ち出づる一歩の地に月けぶる
435  ひとり膝を抱けば秋風また秋風
436  飛行雲時経て鱗雲と化す
437  駅までに秋の暮色に追ひ抜かる
438  秋没日松は花よりくれなゐに
439  花火見て一時間後に眠り落つ
440  夜涼みに脇目もふらず犬通る
441  蜑が戸の虫干見ゆる澳辺かな
442  高鉾に揺れつつ笛を吹きやめず
443  夜の蓮に婚礼の部屋を開けはなつ
444  熱砂ゆく老婆の声もせずなれり
445  大旱や泥泉地獄ふつふつと
446  青梅のなしと思へば見えそむる
447  早苗大切に又放棄して顧みず
448  近づくだけ吾に近づき蛍過ぐ
449  たかんなの土出でてなほ鬱々と
450  葉桜の駅に字を書く洋傘の尖
451  滝浴のまとふものなし夜の新樹
452  燈をとりに来し蛾の闇は雨降れり
453  十里飛び来て山頂に蝿とまる
454  祭あはれ覘きの眼鏡曇るさへ
455  池畔ゆき青萍の香にむせぶ
456  鵜のやさしさ鵜匠の腰の蓑を噛む
457  清水のむつゝがの胸の板ぬらし
458  草茂る要塞砲を毀たれて
459  青野ゆき馬は片眼に人を見る
460  煙草火を海南風の中に乞ふ
461  半天に雲たのみなき峯つくる
462  暑き日のゲートル解けてまた結ぶ
463  飼屋の灯后の陵の方にまた
464  田を鋤ける牛や角より行きちがふ
465  紫雲英田の濃きも淡きも花盛
466  藤を見て来しが電燈黄に点る
467  花更けて北斗の杓の俯伏せる
468  酩酊に似たり涅槃をひた歎き
469  発掘を埋めし上に草芽ぐむ
470  お彼岸や音羽の滝のにぎやかに
471  白樺やのこる古雪萱の中
472  海苔粗朶を浪の出て来るかぎりなし
473  活けし梅一枝強く壁に触る
474  山焼や賽の河原へ火のびたり
475  石鹸玉よろばひ出でし無風かな
476  塩田のゆふぐれとなる遍路かな
477  櫓を揚げて鳴門落ちゆく若布刈舟
478  海は春入渠の船のうすき煙 (神戸三菱造船所浮船渠)
479  畑打や池田の鯉を手捕つたり
480  黒土にまぎるるばかり菫濃し
481  かげろひて港は夏をおもはしむ
482  雪あはく画廊に硬き椅子置かれ
483  犬が来て覗く厨の春の暮
484  七いろの貝の釦の春の昼
485  暮遅し鞴動かす町も過ぎ
486  永き日や庭より見ゆる襖の絵
487  身を埋めゐし落葉より世に帰る
488  紅くあかく海のほとりに梅を干す
489  秋夜遭ふ機関車につづく車輛なし
490  誘蛾灯すでに末世の星懸る
491  旅を行く君に黄泉路も枯れてゐる
492  ひかる鉄路冬のゆふべを貫けり
493  うしろより見る春水の去りゆくを
494  蝌蚪生れて畝火の溝に泳ぐなり
495  寒潮の犇きゐるは解きがたし
496  冬の浪従へるみな冬の浪
497  墓山に厚き氷を凝らしめ
498  掌に枯野の低き日を愛づる
499  玄海の冬濤を大と見て寝ねき
500  枯園に向ひて硬きカラア嵌む
501  猫歩く枯山中にみごもりて
502  せりせりと薄氷杖のなすままに
503  大干潟茂吉の歌集読み暮す
504  稔り田に無頼の草が混り立つ
505  船ゆけり夏の島山を率てゆけり
506  門を落ちて夏濤白く南せる
507  町なかの昔の松の春の暮
508  がくがくと鋏揺れつつ蟹よぎる
509  月光に障子をかたくさしあはす
510  檣燈を夏の夜空にすゝめつゝ
511  石炭を掬ふ音冬遠からず
512  青すゝきわぎもが袖に透きて青し
513  走馬燈青女房の燃やしぬる
514  禍つ魚氷の下闇に游ぐ見ゆ
515  船客に四顧の氷原街見えず
516  牡蠣船や夜の雪堆く覚めてあり
517  翔りゆく落葉の路は嶺の天
518  家路なる眞夜の枯野は行くべかり
519  負け海贏やたましひ抜けの遠ころげ
520  遅々としてわが俳諧や獺祭忌
521  學問のさびしさに堪へ炭をつぐ
522  西開くままに流燈西へ行く
523  雪の上に魂なき熊や神事すむ
524  住吉に凧揚げゐたる処女はも
525  まどろすが丹の海焼や労働祭
526  しづかなる洲に来てヨット寄りゐたり
527  冷し馬潮北さすさびしさに
528  もろ袖にハンカチ探るとき艶めく
529  日蔽やキネマの衢鬱然と
530  笛のこゑ鉾を解体せし後も
531  籐椅子や海の傾き壁をなす
532  ボート裏返す最後の一滴まで
533  障子しむる妻の眼最後までのこる
534  渦潮を落ちゆく船の姿して
535  露けき身いかなる星の司どる
536  投函の後ぞ寒星夥し
537  塵夫出でてこころを遣らふ野分浪
538  虹の環を以て地上のものかこむ
539  天覆ふ鰯雲あり放心す
540  月明の宙に出で行き遊びけり
541  死がちかし星をくぐりて星流る
542  星流る身後のわれの何ならむ
543  海上に星らんらんと曼珠沙華
544  閂をさすむんむんと春の星
545  海の門や二尾に落つる天の川
546  満月の紅き球体出で来る
547  天狼のひかりをこぼす夜番の柝
548  くらがりの手足を照らすいなびかり
549  汽罐車の車輪からからと地の旱
550  いづくにも虹のかけらを拾ひ得ず
551  鏡中に西日射し入る夕立あと
552  五月闇汽罐車一台ゆくごとし
553  寒月に水浅くして川流る
554  虹といふ聖なる硝子透きゐたり
555  砂に寝て砂の軋むや秋日和
556  青嵐電車の音と家にくる
557  黒き帆のまぢかに帰る冬の暮
558  金星を懸くるすなはち冬の暮
559  仲秋や漁火は月より遠くして
560  麦秋や葉書一枚野を流る
561  少年の早くも夏は腋にほふ
562  てのひらに砂を平して五月処女
563  冬の航木箱を海に棄てて去る
564  紅くして黒き晩夏の日が沈む
565  渤海を大き枯野とともに見たり
566  臼を碾きやみし寒夜の底知れず
567  寒き夜のオリオンに杖挿し入れむ
568  愉しまず晩秋黒き富士立つを
569  麦の秋雀等海へ出てかへす
570  くちなしの香を嗅ぎて寄るひとのあと
571  青栗の刻一刻にゆふまぎる
572  緑蔭に読みて天金をこぼしける
573  双眼鏡遠き薊の花賜る
574  新樹の夜星はしづかに飛びはじむ
575  青林檎しんじつ青し刀を入る
576  冬樹伐る倒れむとしてなほ立つを
577  雪やなぎ苑をしろくし人死せり
578  昼ながら天の闇なり菖蒲園
579  向日葵に天よりも地の夕焼くる
580  懸崖菊いかな高さに置くならん
581  鬼灯を地にちかぢかと提げ帰る
582  桜咲く前より紅気立ちこめて
583  梅雨茸や低空飛行実に低し
584  吾亦紅壮なる時過ぎて立つ
585  遅れ咲きいまの落花に加はらず
586  桐の花電線二本過ぎゆくも
587  甘藷を掘ることを暮色の中に止む
588  どこにこのしぶとき重さ西瓜抱き
589  雑木色づきて悲傷の山ならず
590  八重桜日輪すこしあつきかな
591  曼珠沙華雲はしづかに徘徊す
592  妙齢の息しづかにて春の昼
593  生き難き刻午後にありきりぎりす
594  露更けし星座ぎつしり死すべからず
595  夕焼のやがてさめゆく蟻地獄
596  残る虫無間地獄に鳴きひそむ
597  自ら倦みあし踏み替ふる水馬
598  天界に散華きらきら蝉の昼
599  蟹の来るところに斧を置く厨
600  碧揚羽通るを時の驕りとす


 


 

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2018年03月26日(月) 記事No.509



601  蜥蜴出て新しき家の主を眄たり
602  捕鯨船嗄れたる汽笛をならしけり
603  はたはたや妹が唇すふ山の径
604  橇行や氷下魚の穴に海溢る
605  檣頭にこゑ切り落す冬の鵙
606  螢獲て少年の指みどりなり
607  鉄路よりしづけきものなし虫がなき
608  金魚池渾天映りゐたりけり
609  螢谿足音の無き人が来る
610  木陰より総身赤き蟻出づる
611  鳥威す金銀金は火に見ゆる
612  わらべらに寝ねどき過ぎぬクリスマス
613  オリオンが枯木にひかる宵のほど
614  猟夫と逢ひわれも蝙蝠傘肩に
615  一湾をたあんと開く猟銃音
616  流れはやし猟銃肩に渉る
617  猟犬と思へど一犬走るのみ
618  毛皮手に夫人の耳は髪に見えず
619  床下に生きものゐるや風邪癒えず
620  火口湖が白き氷盤となれるのみ
621  病院の燈も年の尾に近づきつ
622  赤き実を垂りて南天提げ帰る
623  冬服の衣嚢(かくし)が深く手を隠す
624  着てたちて羽織のしつけ抜かるなり
625  鷺とんで白を彩とす冬の海
626  暖房や葭の衝立扉を隠す
627  炭焼きし石組もまた廃墟たり
628  大嶺や裾曲の道を炭車
629  大綿やアララギを買ふ町の書肆
630  雪ぐもり火星はもはや高からむ
631  節分の夜や擲ちし煙草の火
632  積雪の鬱たりといふ他はなく
633  虻よんで倦むこと知らず石蕗の花
634  昇降機聖誕祭のとつくにびとと
635  水洟を滴る良寛のむかしより
636  ジヤズ・バンドはしやぎて除夜も深まれり
637  日あたりて春まぢかなり駅の土堤
638  犬橇かへる雪解の道の夕凝りに
639  解纜や亜庭の鯨浮き出でぬ
640  削り木を神とかしづき熊祭
641  曽て世の男女の情や近松忌
642  玉霰すべて了りぬ日の光り
643  手を洗ひ寒星の座に対ひけり
644  寒星やとぼそ洩る燈のおのづから
645  寒江の丸太置場に遊ぶなし
646  眼はうごき眉はしづかにマスクの上
647  硬雪に焚く炭俵スキー会
648  全車輛全スキー揺れスキー列車
649  クリスマストリイともるわれらが貧しき町
650  猛り鵙蘆咲く原をよろこばず
651  鵙の贄雨降りいでて後知らず
652  柚子の香の下過ぎたりと思ひけり
653  晴着よりゆふぐれとなる秋祭
654  見るかぎり同じ速さの秋の川
655  妹と行けば漆の紅葉径に斜め
656  穢土の川葭青々と施餓鬼かな
657  水なぶる童の手あり施餓鬼舟
658  穴惑ひ縞美しと嘆く間に
659  頚垂れて鶉わが掌につゝまるゝ
660  海坂や見えてはるけき鯊の舟
661  颱風を来し濡れ手紙鋏剪る
662  蟷螂のしだいに眠く殞ちゆけり
663  かりかりと蟷螂蜂の皃を食む
664  かまきりのはや枯色を避けがたし
665  一湾の潮しづもるきりぎりす
666  夜はさらに蟋蟀の溝深くなる
667  蘆の花賑やかにしてわれひとり
668  花過ぎしゆすらや茱萸や登山道
669  断崖を跳ねしいとどの後知らぬ
670  藁塚を照らす燈駅の燈もまじる
671  蹠のこそばゆきまで落し水
672  野分だつ中を俯向き牛帰る
673  両肩に夜の寒さの鞭つごとし
674  籾筵素足となりて踏みわたる
675  無花果を喜ぶほどの貧しき膳
676  見るうちにしだいに紅来梅擬
677  定家忌や高き尊き姫みこも
678  定家忌へまがる左手の皇居かな
679  いとちかき処に星あり虫すだき
680  停電の夜にて地虫なきいでつ
681  十町を来てなほ行くや草R
682  掃苔や餓鬼が手かけて吸へる桶
683  石榴の実の一粒だにも惜しみ食ふ
684  稲の上にはかに星を落しける
685  をちかたの洗ひ障子や日に燦と
686  蒼々と障子張り替へられゐたり
687  あしたより鰯雲あり小鳥網
688  秋旱へろつく黍の葉に及ぶ
689  秋没日美しき顔しかめつゝ
690  秋風に舌を扁(ひらた)く児が泣けり
691  老の身のくづほれ寝たり秋日和
692  鞦韆や舞子の駅の汽車発ちぬ
693  秋郊のひやゝかなりし切通し
694  秋の野に溝とび踰えてたのしきろ
695  山の娘のてのひらにうつ秋の蜂
696  秋の暮まだ眼が見えて鴉飛ぶ
697  秋の浜見かへるたびに犬距る
698  秋浜の沙(いさご)を膝に弄ぶ
699  秋の田にものを落して晩鴉過ぐ
700  七夕や真赭の地獄湧きたぎつ
701  銀行をよごして砂糖黍しがむ
702  もみぢばの流れ来て河口出づ
703  樹々多き町富田浜甘藷分つ
704  干し柿の暖簾が黒く甘くなる
705  天暮れぬかぎり刈田の面ひかる
706  梶鞠の鞠足砂をとばしけり
707  食卓にあり食べられぬ烏瓜
708  暮色濃く鰯焼く香の豊かなる
709  堪へがたし稲穂しづまるゆふぐれは
710  盛装を稲田の夕日照らしけり
711  頭上より羽音拡がる稲雀
712  連山を踏みにふむなり稲扱機
713  道すがら見し稲扱の手を真似て
714  てのひらに載せてとろりととろ汁
715  潮漬きし田のいづこにてちゝろ虫
716  あとさきにきちきちがゐてうちまどふ
717  蜂舐ぶる舌やすめずに蟷螂(いばむしり)
718  葭雀すでに河口と云ひがたき
719  白樺の皮葺きたれや避暑の宿
720  梅雨の月凄ししとしと降りゐたり
721  青潮に石花菜(てんぐさ)の花は深けれど
722  わが旅の舷の水母さし覗く
723  胸板に祭太鼓を打ちこまれ
724  蛍獲て少年の指みどりなり
725  郭公や韃靼の日の没るなべに
726  両眼を低くして蟹穴を出づ
727  寂しさにかやつり草の青穂抜く
728  晩婚や蚊帳の縁の紅くして
729  花桐の下に糞尿黄なりけり
730  汽罐車の煙鋭き夏は来ぬ
731  夏ゆふべ父の片手にぶらさがる
732  夏暁のなほ白燈の船あはれ
733  羽抜鶏広き肩胛あはれなり
734  競泳のときもプールを風駆けり
735  としよりの咀嚼つゞくや黴の家
736  鱚釣りや青垣なせる陸(くが)の山
737  蜥蜴照り肺ひこひことひかり吸ふ
738  しんかんと空の蒼さよ葭簀茶屋
739  風来る葭切啼ける行手より
740  悪鬼ゐて地獄たぎらす大旱
741  栴檀の嫩葉のゆふべ星ともる
742  鬢附の香の淫なり立版古
743  和書増えて夕蝉の鳴きゐたりけり
744  轍あと深くかげりぬ誘蛾燈
745  駅の声夜涼に絶えていつか寝る
746  万緑やわが掌に釘の痕もなく
747  索道の石炭落す麻畑
748  母衣蚊帳に蟻匍ふことも憤る
749  配給の蕗をゆさゆさ提げ帰る
750  浜木綿は甲羅法師のかざす花
751  見下して蛭をさげすむことは易し
752  田より来て百姓の娘等氷飲む
753  麦秋や奔流谷を出で来る
754  あひびきは梅の実よりもひそかなる
755  蚤紅く逃げむとすなる美しさ
756  話途中なれども客に虹を指す
757  朝焼に通風筒は並立てる
758  竹落葉ひらりと蝌蚪の水の上
759  大旱や牛頭馬頭に逢ふ地獄村
760  ひんがしの日に照らされて走馬燈
761  白いさぎよし早乙女の膝がしら
762  月の夜にはしばしを梳く洗ひ髪
763  扇風機大き翼をやすめたり
764  赤*えいは毛物のごとき眼もて見る
765  濁流に日のあたりけり青葡萄
766  水錬の紅旗一処に集まりて
767  新緑の庭より靴を脱ぎ上る
768  水暮れて海の鳥来る菖蒲園
769  砂掬ふことが遊びや暑をきざす
770  尾のさきとなりつゝもなほ蛇身なり
771  向日葵のまなひ瞠れる園生かな
772  空蝉を風の中にていつくしむ
773  洛中のいづこにゐても祇園囃子
774  蟹の直ぐそばに滔々たる流れ
775  夏の暮駅の水栓飲み勤む
776  よるべなく光あかるし夏の浜
777  炎昼やとぼしけれども蔵書あり
778  炎ゆる海わんわんと児が泣き喚き
779  瓜貰ふ太陽の熱さめざるを
780  風呂敷の瓜に手を触れては老婆
781  鵜飼の鵜アクアラングの足で立つ
782  高浪に眼をねむらざるキヤムプかな
783  アカシヤのもとに梢の花も落つ
784  夜桜や汽車の白煙ふんだんに
785  炭坑の汽車に乗り来て入学す
786  鉄橋のとゞろきてやむ雪柳
787  あたゝかき昼岳上に雪残る
788  新入生靴むすぶ顔の充血する
789  名を知りて後星の春立ちにけり
790  火星なほ燃えて春天明けゐたり
791  残雪の硬きを踏めば去り難し
792  奈良線に沿へりし邑の鶏合せ
793  海苔粗朶のなほ黒くして明けやらず
794  海女の春礁は海の草繁り
795  なほ黄蝶たりや食はれて翅ばかり
796  どんよりと利尻の富士や鰊群来
797  苜蓿は丘となりゆく恋の丘
798  あひびきのほとりを過ぎぬ苜蓿
799  あひひきや枳殻のとげ青き頃
800  壷焼や海女のいとなみ居つゝ見ゆ
801  まどろすが丹(に)の海焼けや労働祭
802  激つ瀬やのど瀬にかよふ落椿
803  麦青し眼ゆがめて洟をかむ
804  猫柳高嶺は雪をあらたにす
805  猫の恋昴は天にのぼりつめ
806  東風強くして踏切の天鳴れり
807  尼宮を母(も)といたゞけり地久節
808  卒業の日の病棟に在る患者
809  卒業や畳しづけく思ほゆる
810  この家とも別れや松の花終る
811  春眠のわが身をくゞる浪の音
812  春蝉を聞いて仰臥の手足かな
813  砂浜に日あたれば憂き春の風邪
814  少女たるよろこび春の日に瞑る
815  同じ字を砂に書きつゝ春の昼
816  七星のうすれてかゝる春の霜
817  この家を去る日ちかきに春の蝉
818  指さすがごとく種蒔く農婦かな
819  若草にやうやく午後の蔭多く
820  傷つきてとびすさむなり黒揚羽
821  岩窪に深き海ある黒菜かな
822  峯雲の贅肉ロダンなら削る
823  ほのかなる少女のひげの汗ばめる
824  一輪の花となりたる揚花火
825  どこまでも水田日本は水の国
826  日本の霞める中に富士霞む
827  げんげ田の広大これが美濃の国
828  天耕の峯に達して峯を越す
829  日本がここに集る初詣
830  燃えさかり筆太となる大文字
831  泳ぎより歩行に移るその境
832  鵜篝の早瀬を過ぐる大炎上
833  美しき距離白鷺が蝶に見ゆ
834  太陽の出でて没(い)るまで青岬
835  苗代にいのち噴かざる籾が見ゆ
836  手を入れて井の噴き上ぐるものに触る
837  頭なき鰤が路上に血を流す
838  全長のさだまりて蛇すすむなり
839  一湾の潮(うしほ)しづもるきりぎりす
840  沖までの途中に春の月懸る
841  パンツ脱ぐ遠き少年泳ぐのか
842  舟漕いで海の寒さの中を行く
843  寒き沖見るのみの生狂ひもせず
844  海に鴨発砲直前かも知れず
845  蟷螂の眼の中までも枯れ尽す
846  除夜零時過ぎてこころの華やぐも
847  紅きもの枯野に見えて拾はれず
848  秋の暮水中もまた暗くなる
849  悲しさの極みに誰か枯木折る
850  月光の中じゆんじゆんと時計鳴る
851  波にのり波にのり鵜のさびしさは
852  土手を外れ枯野の犬となりゆけり
853  鷹の羽を拾ひて待てば風集ふ
854  この岸にわが彳(た)つかぎり蟹ひそむ
855  城を出し落花一片いまもとぶ
856  雁のこゑすべて月下を過ぎ終る
857  秋の暮山脈いづこへか帰る
858  つきぬけて天上の紺曼珠沙華
859  蟋蟀の無明に海のいなびかり
860  火口丘女人飛雪を髪に挿す
861  蟋蟀が深き地中を覗き込む
862  夏の河赤き鉄鎖のはし浸る
863  凍鶴の啼かむと喉をころろころろ
864  するすると岩をするすると地を蜥蜴
865  ピストルがプールの硬き面にひびき
866  春潮やわが総身に船の汽笛(ふえ)
867  掌(てのひら)に枯野の低き日を愛づる
868  祭あはれ奇術をとめに恋ひ焦れ
869  男の雛もまなこかぼそく波の間に
870  夏草に気罐車の車輪来て止る
871  ラグビーのジヤケツちぎれて闘へる
872  スケート場沃度丁幾の壜がある
873  春潮に海女の足掻きの見えずなる
874  鳰鳥の息のながさよ櫨紅葉
875  巨き船造られありて労働祭
876  探梅や遠き昔の汽車にのり
877  匙なめて童たのしも夏氷
878  夜を帰る枯野や北斗鉾立ちに


 

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