観光センター前の土産物店で買い物をして、今日宿泊するペンション、「PAL」に向かう。
過去2回は、民宿に泊まった。どちらも露天風呂が良さそうだった。最初の民宿の露天風呂は渓流沿いにあり、リスも出るところ。2回目の民宿は、母屋より長靴で雪をかき分け山にはいるところ。どちらも野趣に富んだ野天風呂であった。
今回の「PAL」はペンションであるが、風呂が4つあり、貸し切り露天風呂が2つもあるらしい。
HPの写真がなかなか素敵な温泉である。前2回もそうであるが写真は上手く撮られているので、実物は80%位のことが多い。
あまりの期待は禁物である。
高原の中央通りを少し下り、No.8の案内板を左に入り、林の中の細い道を辿ると、P.パルの案内板が目に入った。

外観は白いペンションらしい建物である。前が駐車場になっている。左は白樺林、右の農地の先には白い学校のような宿泊施設が見える。

中に入り声を掛けると、ペンションの奥さんがいらっしゃいませと登場する。
背の高いすらりとした奥さんである。民宿の奥さんとペンションの奥さんとは違うようである。
宿帳を記載しながら種々説明をして頂く、お話好きな奥さんである。サービス業はお話が大きな意味を持っている。
チェックインの手続きを済ませ、階段を上がった正面が部屋である。
部屋にはベッドとガラスの小さいテーブルがあるのみのシンプルな部屋である。テレビを置かないのは方針らしい。テレビがなければ時間の流れが変わる、その場所の時間が流れるのは確かだ。静かである。
今日の宿泊は3組のみなので、内湯に露天風呂の付いた男湯・女湯も貸し切りでよいとのことであった。早速、検分に出かける。
階段を下り、中間の踊り場を向こうに上がると風呂棟に行くことが出来る。
風呂棟は別棟になっているが、風よけ雪よけの透明なプラスチックに囲われた温室のような廊下を渡るので快適である。
入り口のガラスを横に開くと、ホールのような部屋があり、テレビの横には版画が並んでいる。日帰り入浴の空間なのであろうか。
温泉は4つある。
男湯・女湯・雪見の湯・木立の湯の4つである。
男湯・女湯は内湯であるが、洗い場と付属の露天風呂を持っている。
雪見の湯・木立の湯は、洗い場の無い露天風呂である。
内湯と露天風呂には大きな違いがある。温泉が違うのである。
内湯は無色透明なナトリウム単純泉、露天風呂の方は白骨温泉のような乳白色の単純硫化水素温泉である。
ホールの左側手前に男湯、奥に女湯がある。客が多いときは男女別であるが今日は貸し切り使用が可能である。
男湯-内風呂に露天風呂が付いている。
露天風呂は低いところにあるので、ゴム草履で踏み石の階段を下りることになっている。

女湯は露天風呂がガラス戸の直ぐ横にあるので、男湯のように下に下りる必要がないので他人の目を気にしなくても良い安心感がある。
それでも、露天風呂に入れば、目の前は白樺林が広がり、林の中に身を置いて温泉に入る野趣はある。

露天風呂に行くには、ゴム草履を履き、ガラス戸を押してホールを出る必要がある。しかし、ガラス戸の外には木の廊下があり、草履を履かなくても露天風呂に行くことは出来る。

雪見の湯は一番奥にあり、視角が90度あり、開放感がある。
風呂に入るには、湯冷め防止のために浮かべてあるマット取りはいる。乳白色の温泉は硫黄の臭いの強い、正に温泉である。

木立の湯は正面だけ視角である。矢張り硫黄の臭いの強い乳白色の温泉である。

空いていた洗い場付の男湯にゆっくり入り、山下り2時間で痛くなった左足を休める。
付属の露天風呂へはゴム草履を履いて下りるが、雪のシーズンには、角度があり注意しなければならない。
外に張り出した、露天風呂からの白樺林は気持ちがよい。
風呂から上がると、夕食の6時半にはまだ1時間強ある。
部屋に戻り、テレビのないゆったりした時間にボンヤリと身体を休めることにする。温泉の所為か身体がポカポカと温かいのを感じる。
食事は、1階玄関を入った直ぐ左の部屋でいただく、ミニコースである。

飲み物は、ビール、冷酒、焼酎何でもあるが、PALが力を入れているのはワインである。ワインと言っても気取ったものではなく、手頃な値段のものである。
日本酒党の笑山には、冷酒しかないのが残念だが、今宵はワインにすることにする。グラス・ハーフ・フルボトルいずれも可能であるが、当然フルボトルをお願いする。

ドイツのオッペンハイマー2005は、フルーティで甘い。後半に果実の酸味を感じる口当たりの良いワインである。

前菜は半熟ゆで卵に和風出汁の煮こごりと山菜(ワラビ、筍)の漬け物、長いもの乱切りが添えられている。
これをスプーンでかき混ぜていただくと説明を受ける。見た目の洋風と味の和風がコラボレートする珍しい前菜だ。

にんじん・グリーンピース・豆のトマトスープ。

きのこのサラダ

ムール貝の焼き物。貝が生臭くもなく、焦げても無く、丁度良い焼き加減で、美味しい。

ポークとクリーム煮のカツレツ。上に掛けられているデミグラソースがスパイシーな香りを立てている。

デザートはコーヒー、紅茶その他から選択できるので、レモンティーをいただく。
ケーキは日の丸のように白地に赤のポイントが鮮やか。乗っているスグリのジャムの甘さとクリームチーズの濃厚な味がマッチした、見た目可愛いが、中身の濃いパンチのあるケーキである。
食事の時間、メロウなジャズが流れていた。
食事の空間の隣にラウンジがあり、片隅のペチカの反対側に大きなフロア型スピーカーがデンと座っている。
アルテック製のMantaray、30年まえのものだそうである。
アルテックというとホーン型のA7とか映画館のスピーカーで有名だが、これはコアキシャルであるが真ん中はホーンであるユニークな構成。
巨大なモニターに比べれば小さく見えるが、側の石油ファンヒーターに比べればサイズの解る大型フロアスピーカーの低音の豊かさは昨今のミニサイズのスピーカーでは表現できない音。
家からCDを持ってきて聞きたいものである。

夜が明けて、待ちかねたように朝風呂に行く。
今回は貸し切りの女風呂である。洗面をし、外の露天風呂から朝の空気の白樺林を眺めていると、時間が流れているような、止まっているような不思議な感覚になる。
林間の露天温泉、雪見酒もいいだろう。
朝食も夕食と同じ場所でいただく。前日に予約すれば和食も可能であるが、洋食をいただく。
林檎とブドウのジャム。

飲み物は、コーヒー、紅茶、ジュース、ミルクから選択できる。
普段はコーヒーは頂かないが、あまり良い香りが流れているので、コーヒーをいただいた。
口に含むと滑らかな刺激を全く感じないまろやかな酸味を感じる。コーヒー通の義兄の家でいただいた拘りのサイホンコーヒーに近い世界である。コーヒー音痴にでも、これは美味しい事は解る。コーヒーはお代わりできる。
お聞きすると、何でもこの地の水は硬水とかでコーヒーが美味しく入れられるとのことであった。

肉とジャガイモのクリーム和えとレタスのサラダ

スクランブルエッグとベーコン。昨夜のムール貝もそうだったが、焼きが適切に加減されていることを感じさせる。玉子の生汁がしたから出てくるスクランブルエッグは食べられない人もこれは大丈夫、美味しく頂ける。ベーコンも焦げ臭くないし、カリカリでもないし丁度良い焼き加減。
トーストは厚めだが、お代わりも可能である。

デザートはフルーツカクテルにヨーグルト、ジャムのかかったもの。

他の2組は早々に出立する。我が輩も出発することにしよう。
チェックアウトの際、奥さんにお話をお聞きする。
20有年前に開店当時は、入り口のある棟だけであったが、お客さんに支えられ、奥の棟を増設し、また温泉棟を増設して来ている。
乳白色の露天風呂が最も新しく、当初は乳白色の温泉の権利は新参者には手に入れられないものであったが、その後の環境変化により漸く手に入れることが出来たとのこと。
白樺林には猿が出没する話しなどつきることがない。
ペンションPALは、リピーターに支えられて拡張してきたという話が納得できる、お薦めの宿である。
風呂は4つあり、内湯は会社の寮の風呂より広く立派なものが2つある。他のお客は、高級旅館の風呂より立派と話していたそうである。
トイレは清潔である。便座ペーパーも常備されている。
食事は既述の通りで心のこもった美味しいものが、一点一点出来立てが運ばれる。
これで宿泊料金は、8400円+入湯税150円である。
何かの間違いでは無いかと思う位である。
コースを出すペンションは値段が高くサービスが悪いというのが経験則だったが、PALはこの経験則を塗り替えてくれた。
リピーターが多いことは当然の事である。
混雑する時期を避けてリピーターになる覚悟でPALを後にすることにした。
【ペンション PAL】
〒390-1506 長野県松本市安曇4005-5
PHONE: 0263-93-2664
E-mail: papa@p-pal.jp
URL: http://www.p-pal.jp/
また、トンネルをいくつも抜けて、安曇野に向かう。
安曇野は、何度も行っているので簡単に済ませて、松本にて昼ご飯を食べる。ネットで見たカレーのバイキング1050円大好評という「メーヤウ」に行ってみた。


カレーバイキングはご飯、カレーである。サラダはない。
カレーは、
・タイ風ドライカリー
・ミャンマーカリー
・タイ風グリーンカリー
・タイ風レッドカリー
・スリランカ風ビーフカリー
・マイルド? チキン
・タイ風パイナップルカリー
・ハシュドビーフ
タイ風トムヤムクンスープは別料金210円である。

葵の印籠の紋に似せて盛るので『黄門盛り』というそうだが、ご飯で3つ矢印を作り、3種類のカレーを同時に盛ってみた。
カレーはスープカレー風にさらさらとしているが、かなり辛い。
マイルド?チキンは特に辛い。
辛いのが苦手な方は、ドライカレー、パイナップルカレー、ビーフカレー、ハッシュドビーフがお薦め。
花の時期の松本城は別として、いつも通過するだけで町を見たこは無かった。
江戸の町並みがあるという中町通りを、昨日の山下りの後遺症である足の痛みを道連れに歩いてみた。

和菓子屋さん。復元された綺麗な建物である。店の前には懐かしい手押しポンプの汲み上げ井戸がある。現在も綺麗な水を出してくれる現役である。

この漆器のお店は古い建物である。ところどころ古い建物がある。
松本駅に近く便利なので、もう少し町並みが長く、店舗が多ければ、観光客も多くなるだろう。
後は、買い物を済ませればもう帰りの時間である。
今回の旅行は、乗鞍の錦秋の景観を見る目的は達成されたし、宿のPALは期待水準以上のサービスで賞賛・拍手レベルの内容であったし、満足の出来る2日間であった。