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2017年07月22日(土) 記事No.893


芥川賞は文学を目指す者にとって特別な意味を持つ文学賞だ。
太宰治は芥川賞がどうしても欲しかったが、どうしても得られなかったのはよく知られた話だ。
だが、太宰は若者によく読まれ続けている文学者であることは、それもまた事実だ。


純文学のジャンルで、新しい世界、文体、表現、創造性を表現した作品に与えられる芥川賞だから、その作者も非日常的な人が多いのも当然だ。
酒を飲んで受賞会見をし「貰ってやる」と発言した人も居た。

その意味では、今回受賞した沼田真佑氏はちょっと印象が違う。
普通なのだ。
誠実さが漂う空気を感じる。

受賞会見の中でのやり取り。
『...
記者1 候補になったときには、「初めて買った安いギターで有名なライブハウスのステージに立ったような気分だ」というような言葉をおっしゃってたんですけれども。
実際今度獲っちゃいましたけれども、改めてステージに立っただけではなくて獲ってしまったということについての感想をもう一度。

沼田 やっぱり1本しか書いてないというのはありますので、なんか……例えばジーパン1本しか持っていないのにベストジーニスト賞みたいな(笑)。
(会場笑)

...』

何度もノミネートされて、その経歴の上に受賞の晴れ舞台がある芥川賞だから、沼田氏が語るのは正直な戸惑いだろう。

その他、普段着での記者会見とか、記者とのやり取りが誠実で好感が持てる。
見ていない人は、下のyoutube動画で聴くことができる。

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歳独身、学習塾の塾英語講師。
生徒たちには人気の先生だそうだ。

選考会では、推薦者と反対者の激論があったそうだ。
推薦者の高樹氏は、まだ1本だが、まだまだ書ける力があると言い、反対者はこれ1本で、もう書けないと言ったそうだ。

どちらが正しいのかは、これから沼田氏が証明して行くことだ。

誠実な人は、責任感に押しつぶされることもある、が、ユーモアを解する余裕のある沼田氏はその恐れはないだろう。

今後の活躍を期待したい。



『第157回「芥川賞」に沼田真佑氏の『影裏』 「直木賞」に佐藤正午氏の『月の満ち欠け』
7/19(
) 19:25配信


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157回「芥川賞」を受賞した沼田真佑氏(左)、「直木賞」を受賞した佐藤正午氏

日本文学振興会は19日、『第157回芥川龍之介賞・直木三十五賞(平成29年上半期)』の選考会を東京・築地「新喜楽」で開き、芥川龍之介賞に沼田真佑氏(38)の『影裏』(文學界5月号)、直木三十五賞に佐藤正午氏(61)の『月の満ち欠け』(岩波書店)を選出した。2人は初受賞。

【写真】第157回芥川賞・直木賞 ノミネート作家一覧

両賞は1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。前者は主に無名・新進作家、後者は無名・新進・中堅作家が対象となり、受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が与えられる。

前期・第156回(平成28年下半期)の芥川賞は山下澄人氏の『しんせかい』、直木賞は恩田陸氏の『蜜蜂と遠雷』が選出された。

157回候補作は以下の通り(五十音順・敬称略)。

■第157回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)
今村夏子『星の子』(小説トリッパー春号)
温又柔『真ん中の子どもたち』(すばる四月号)
沼田真佑『影裏』(文學界5月号)
古川真人『四時過ぎの船』(新潮六月号)

■第157回直木三十五賞 候補作(出版社)
木下昌輝『敵の名は、宮本武蔵』(KADOKAWA
佐藤巖太郎『会津執権の栄誉』(文藝春秋)
佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店)
宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA
柚木麻子『BUTTER』(新潮社)

』(ORICON NEWS)






「芥川賞・沼田真佑さんが会見」


https://youtu.be/POol5A8gRcM




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2016年07月19日(火) 記事No.1438


前回に続き、芥川賞は女性が受賞した。
受賞したのは『コンビニ人間』を書いた村田沙耶香氏。
初めて候補者になり、そのまま受賞というスピード受賞だ。

直木賞は、荻原浩氏の「海の見える理髪店」(集英社)が選ばれた。荻原浩氏は5回目で初受賞。
「海の見える理髪店」は6篇からなる短編集だが、それぞれ心打たれるお話だそうだ。

芥川賞の候補者5人のうち4人が女性だったそうだ。
前回の芥川賞も女性の本谷有希子氏だった。
これからも、芥川賞も女性優位になりそうだ。

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(ORICON STYLE)
19:15
(左から)『コンビニ人間』で芥川龍之介賞を受賞した村田沙耶香氏(撮影=永瀬沙世)、『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞した荻原浩氏


『155回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞に村田沙耶香(さやか)さん(36)の「コンビニ人間」(文学界6月号)が、直木賞に荻原浩さん(60)の「海の見える理髪店」(集英社)が選ばれた。村田さんは初めての候補、荻原さんは5回目での受賞。

贈呈式は8月下旬に東京都内で開かれ、正賞の時計と副賞の賞金100万円が贈られる。

村田さんは千葉県出身、玉川大文学部卒。「授乳」で2003年群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。「ギンイロノウタ」で09年野間文芸新人賞、「しろいろの街の、その骨の体温の」で13年三島由紀夫賞をそれぞれ受賞した。他の作品に「殺人出産」など。

受賞作は、コンビニエンスストアで18年間アルバイトを続ける36歳の恋愛経験のない独身女性が主人公。結婚や出産をして当然の社会を理解できず、コンビニのマニュアルの中でこそ生きがいを感じている。しかし、ある男の出現から危機に陥る。

村田さんは受賞決定の記者会見で「コンビニは自分の聖域なので、小説にすることはないと思ったが、なぜか書いてみようと思いました。コンビニに対する愛情を作品にできたことは良かった」と喜んだ。さらに「人間が好きという気持ちで書いているので、人間の面白さが表現できたらうれしい」と語った。

荻原さんは、埼玉県大宮市(現さいたま市)生まれ。成城大経済学部卒。1997年小説すばる新人賞を受賞してデビュー。05年「明日の記憶」で山本周五郎賞、14年「二千七百の夏と冬」で山田風太郎賞を受賞した。

受賞作は、遠くから来た客と理髪店の店主が過ごした一時を描いた表題作など6編からなる短編集。親子、夫婦の間で起こる喪失、すれ違いを安定した筆致でつづる。

荻原さんは「ほっとしている。いつも心の平和を保つために、落ちる時のシミュレーションしか頭の中でしてなかったのでちょっと戸惑っている」と苦笑。還暦での受賞について「せっかくそういう(還暦の)年なので、暦が変わった今年から、気持ちを新たに頑張ってみようかと考えている」と喜びを語った。【内藤麻里子、鶴谷真】

◇選考委員の話

◇芥川賞「今でなければ書けない、興味深い作品として評価」

芥川賞選考委員、川上弘美さんの話 コンビニという現代的な場所でしか生きられない主人公を設定し、SF的だ。周りの人間を活写することで、「普通」に対する批判になっている。全体に過不足なく描写され、ユーモアもある。今でなければ書けない、興味深い作品として評価された。

◇直木賞「ベテランの熟練の技を見せ、心打たれる内容」

直木賞選考委員、宮部みゆきさんの話 圧倒的な読み心地の良さがあった。短編集は読み終わった後、内容を忘れることが多いが、荻原さんの作品は一つ一つ心に残り、読み終わった後思い起こすことができる珍しい作品だと評価された。ベテランの熟練の技を見せ、心打たれる内容だったという意味でも、最初の投票から高い支持を得た。』
(毎日新聞)



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2015年12月11日(金) 記事No.1787


NHKで水木しげるの「水木サンの幸福論」を取り上げていた。

水木しげるの漫画は知らない。
ゲゲゲの鬼太郎も見たことはない。
妖怪や気味の悪い絵は見たくない。
矢張り、綺麗な明るい絵のほうが好きだ。

水木しげるの「幸福の七カ条」は以下の通りだそうだ。

第一条
成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。

第二条
しないではいられないことをし続けなさい。

第三条
他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。

第四条
好きの力を信じる。

第五条
才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。

第六条
怠け者になりなさい。

第七条
目に見えない世界を信じる。


1条から4条までは素直に理解できるが、5条と6条は一捻りしてある。
5条は悲観への対処法、生きるための知恵であることは解るのだが、裏切ると言い切られてしまうと辛い、裏切ることもある位にして欲しい。
確かに漫画や芸人の世界は、厳しい。努力したから成功する保証は全く無い。
努力するのは当たり前で、これは必要条件。成功するには十分条件が必要だ。それは才能と運と出会いだ。

6条は、疲労への対処法だろう。
根を詰めて目一杯頑張っても、報われない時もある。それを続ければ、5日疲労する。疲労すれば、心も身体も思うようには動かない。悪循環に陥り、挙げ句の果ては絶望に落ち込んでしまう。
そうならないように、たまには怠けて休みなさいということなのだろう。


番組に出演した境港が好きになって、移り住んでしまい、今は境港の宣伝を行っている人が語った言葉が良かった。

『好きなことがああれば、それを糧に生きていくことができる。』

その通りだと思う。


【データ】

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角川文庫 2007/4
637円





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2015年07月16日(木) 記事No.2031


ピースの芸人又吉は、お笑い芸人としては好きではない、と言うか寧ろ嫌いだ。

理由は感覚的なもので、明確ではない。
暗い・人間の存在感がありすぎる・髪の毛が長すぎて鬱陶しい...

お笑いなんだから、明るく軽く、全てを笑い飛ばして、サービス精神に徹して自分を消して芸になりきる。芸があるうちは笑い転げて、終わったら何も残らない。変わったのは明るい気分になったことだけ。

そんな芸人が好きだ。
そんな芸人は誰だと言われれば、何人もいるが、代表は高田純次だ。
彼の芸は軽く流れていく、嘘なのだがひょっとすると本当かもしれない、嘘嘘の中に軽やかに何も残さないように只管流れていく...

作家又吉直樹は、力量があるのだろう。
作品「火花」については、読んでいないので語ることは出来ないが、立派な作品であることは間違いないはずだ。

又吉の受賞は直木賞の方が相応しい感じがしたが、毎日新聞の記事を見て成る程と思った。

『純文学の命題たる「人はなぜ生きるのか」』を抉っているそうだ。

会見で又吉氏は、今まで芸人100でやって来た、文筆はその他でやって来た。この割合はちょうど良く、これからもこのバランスでやりたいというような発言をしていた。

印刷の小説が売れない時代、話題性のある小説が必要だ。文藝春秋のプロモーションも受賞の一因であったかもしれない。

次の小説がどうなるのか。
人間又吉の生きる道はバランス取りが難しそうだ。


『<又吉さん芥川賞>「火花」生きる悩みを鮮明に
毎日新聞 7月16日(木)23時29分配信

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芥川賞を受賞し、記者会見で質問に答える又吉直樹さん=東京都千代田区で2015年7月16日午後9時10分、喜屋武真之介撮影

芥川賞の又吉直樹さんの「火花」は、主人公が売れない若い漫才師だ。語り手となる20歳の徳永は4歳年上で別のコンビの漫才師の神谷にひかれ、弟子になる。神谷は天才肌だが、芸を突き詰めるあまり、世間から排除されていく。生きづらい神谷を鮮やかに造形したのが、小説の成功につながった。

【芥川賞、又吉直樹さんと羽田圭介さんに】

実際にお笑いの仕事をするシーンはごく少ない。中心は、真のボケや面白さとは何かを巡って徳永と神谷が路上や居酒屋で繰り広げる徹底的な問答である。純文学の命題たる「人はなぜ生きるのか」という青年期の悩みをえぐる作業に通じる。また、普段は視聴者としてお笑いを眺める私たちにとって、裏側の厳しさを知ることができるリアルな職業小説としても読める。

また本作は、熱く生きた日々を後年から回想する長い時間軸をもっており、一度きりの青春のいとおしさが余韻となって押し寄せてくる。何よりも神谷をはじめ、夢破れてお笑い界を去った仲間たちにエールを送る徳永の目線こそが、現実社会で日々苦闘する読者の共感を集めるのだろう。【鶴谷真】』
(毎日新聞)





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2015年01月11日(日) 記事No.2355


書架の前を歩いていると須藤元気の文字が目に入った。
最近、離婚したことが話題になった須藤元気だ。
タイトルを見ると「幸福論」。
こんな本があるのかと手に取ると、格闘家時代に書いた処女作だった。読むことにした。


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2005年の春から夏にかけて須藤は、四国八十八ヶ所のお遍路に出かけた。その時の体験を素に感じた事を書いた本である。

2005年当時、須藤は総合格闘技で連勝中であり、人気も絶頂期であったと言って良い。
その年の大晦日、山本"KID"徳郁にKO負けしたが、翌2006年は総合格闘技では2戦2勝している。
そして、2006年大晦日の試合に勝ったリング上で突然引退を表明した。

高校時代から須藤は“世界最強の男になる”のが口癖で、プロの格闘家になるためにアメリカに渡り修行をし、日本に帰りK-1、総合格闘技でトリッキーな動きや入場時の奇抜なパーフォーマンスで人気格闘家になった。
それまでの価値は「最強」だった。

2005年須藤は、変化を求めていた。
その時、遍路に出かけた。
そして、変わった。

幸福論の目次は、
序章 プロローグ
第1章 THE LONG AND WINDING ROAD―発心の道場・徳島県
第2章 HONESTY―修行の道場・高知県
第3章 NEVER MIND―菩提の道場・愛媛県
第4章 TIME TO SAY GOOD‐BYE―涅槃の道場・香川県
終章 エピローグ 八十八カ所を経て見えてきたもの

遍路の体験を書いてはいるが、この本は遍路の本でも仏教の本でもない。
須藤が「自己との対話」を遍路期間中続け、そしてありがとうを言い続けることによって、変わった。

終章で彼はこう書いている。
『「幸福だから楽しいのではなく、楽しんでいるから幸福なのだ」
つまり、経験が在り方を生むのではなく、在り方が経験を生むのである』

2005年10月に、この本は出版された。
2006年末に引退。
2007年10月に文庫本が発行された。
11月には結婚を発表している。

文庫本のあとがきに書いている。
遍路前は、自分の思考・感情がコントロールできなかった。そのためネガティブワールドから抜けだせないでいた。
ありがとうを言い続けた遍路後は、ポジティブワールドに自分をコントロールできるようになった。


この本を読んで最も印象的だった文章はp140から始まるタオル屋さんのお兄さんの話。
先に、Pharrell WilliamsのHAPPYについて記事を書いたが、全く同じことが書かれていた。

そのシーンに幸福論が確かにある。


【データ】


須藤元気(著)
幸福論 (ランダムハウス講談社 す 1-1)
ランダムハウス講談社
発売日:2007-10-02

須藤元気の公式サイト
http://www.worldorder.jp/


引退後2008年には、母校の先輩から要請を受けレスリング部監督に就任。レスリング部を優勝できるチームに変身させ、2012年には7回目の
最優秀監督賞を受賞するという足跡を残している。
拓殖大学監督としての須藤元気について
インタビュー記事がある。
最後の言葉は、「幸福論」にも繋がっている。

労政時報 jin-jour
http://www.rosei.jp/jinjour/list/series.php?ss=3068




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