菊石(浦野酒造)の新酒試飲販売会に行ってきた。
毎年、蔵内の100年桜の古木が満開を迎える頃、菊石の蔵開放が行われる。
今年は、事情により中止されたので残念だったが、毎年蔵開放に合わせて提供される蔵開放限定のしぼりたて新酒「菊石夢さくら」「菊石山さくら」が飲みたいと言う声が多く寄せられたので、新酒の試飲販売会で提供することになったそうだ。
日時: 平成23年4月23日(土)
同上 24日(日)
午前10時~午後3時
場所:浦野酒造
豊田市四郷町下古屋48
催し内容:
・新酒試飲販売
蔵開放限定酒「菊石夢さくら」「菊石山さくら」
袋濾し純米吟醸など
・菊石酒粕饅頭の販売
「菊石酒蔵饅頭」(地元豊田の井口製菓舗製)
「菊石酒粕蕎麦」(地元豊田の雀の宿製)
・蔵の写真展
「菊石 -手から生まれる酒-」脇田千帆1st写真展
(名古屋学芸大学メディア造形学部映像メディア学科在学)
本当は、昨日行く予定だったのだが、生憎の激しい雨と風、軟弱な筆者は、明日は晴れとの予報に乗って見送った。
予報通り、今日は朝から良い天気だ。
10時前に豊田の菊石に着くためには、早めに家を出なければならない。試飲があるので車では行けない、交通機関を乗り継ぐことになる。
急いで駅に向かう。

通り道、染井吉野は昨日の雨で散り残した花を全て散らし、強い風雨は桜蘂も落とし、路面を赤く染めている。


わずかに残花が見えるが、染井吉野の枝は風雨に負けなかった花蘂が枝を赤く飾っている。
花蘂の時を過ぎれば、染井吉野は新緑の若葉の季節を迎える。

八重の山桜は、今が花盛りだ。

八重の花も若葉も盛を謳歌している。
高蔵寺駅から愛知環状鉄道で四郷駅に向かう。
車窓から見える郊外の風景ももう若緑色の新緑の色に染まり始めている。
列車が瀬戸駅に着くと、同好の士H氏が乗り込んできた。
例年の花見、昨日の雨にも負けず出かけた人の話など春の車窓の中話す。
先日の名城公園の際に借用した缶ビール代250円を忘れないように返却した。250万円の借金はお互いに忘れないが、250円の借金はこちらが忘れやすいので気をつけ無ければならないのだ。
四郷駅で下車し、田圃道を抜けながら菊石に向かう。
昨日の天気が、嘘のような良い天気である。
例年より2週間ほど遅いが、田圃の様子はあまり変わらない。
起こされた真っ黒な土に水がはられ、田植えを待っている。
苗代から運ばれた稲の苗が箱に詰められて置かれているのを見ると、田植えは間近なのだろうか。
幹線道路手前の公民館の桜も、例年は花を付けているが、今年は若葉になっている。
道路を横断すれば、もう浦野酒造が目に入る。

いつもは行列ができている入り口にも今年は行列が見えない。
先客は女性の二人連れだった。



試飲会会場のテントでは、開場時間に向けて準備中の人影が忙しく動いている。

近くの植え込みに紅いつつじが輝いていた。
いつもは早い同好の士T氏も開場の10:00前には到着し、いよいよ開場となる。

早速テントの試飲コーナーに並ぶ。

試飲できる新酒は、6種類。
(1)菊石 純米酒 山さくら
(2)菊石 純米酒 夢さくら
(3)菊石 袋濾し純米吟醸
(4)菊石 本醸造 もと 初しぼり 生酒
(5)しろうま 菊石
(6)菊石 純米吟醸

だが、掲示を見ると、袋濾し純米吟醸ともとは完売の表示。
昨日、完売となったようだ。
どうしても手に入れたい人は、雨にも負けず昨日来るか、予め予約しておくかしか無い。
するべきことをしなかった人は自己責任である。

(1)菊石 純米酒 山さくら
毎年蔵開放限定の山さくら、市販されないのでこの機会にしか味わうことが出来ない酒だ。
兵庫山田錦100%、精米歩合55% 日本酒度0 酸度1.5 アミノ酸度1.0 度数15~16度
純米酒の表示だがスペックとしては、純米吟醸だ。
新井杜氏に伺った話では、愛知の新酒鑑評会で受賞した純米酒は、このタンク違いの山さくらだそうだ。
この原酒は通年商品としては、山田錦純米酒になるようだ。
印象は、立香はあまり立たないが、山田錦らしく柔らかいふくらみを感じさせ上品なバランスのとれた味わいを持った酒である。

(2)菊石 純米酒 夢さくら
富山産五百万石100%、精米歩合60% 日本酒度+3 酸度1.6 アミノ酸度1.3 度数15~16度
この酒も純米酒表示だがスペック的には純米吟醸だ。
印象は、山さくらに比べれば、立香を感じる。軽目だが、エチル系(バナナ)の香り。山さくらに比べると酸味があるがふくらみは大きくなく、スッキリとした切れを感じる。

(5)しろうま 菊石
毎年楽しみな濁り酒。
酒造好適米 精米70% 日本酒度-8 酸度1.2 アミノ酸度1.1 度数15~16度
スペック的には、アルコールと糖類が添加された普通酒。
上手く設計された味で、飲み易い。甘い入り口だが、酸味もあるのでベトベトした味わいではなくスッキリとした爽やかさがある。先後のバランスも良く、重さは感じ無い。後口も切れが良い。
昨年は、お花見に持ち込んだ酒だ。

(6)菊石 純米吟醸
富山産五百万石100%、精米歩合55% 日本酒度+0 酸度1.5 アミノ酸度1.3 度数15~16度
この酒は、夢さくらにスペック的には近いが、55%の純米吟醸だ。
強くはないが適度な吟醸香の立香があり、味のバランスも良く上品な柔らかさを感じる。
(5)しろうま 菊石
(6)菊石 純米吟醸
を購入することとした。
試飲テーブルの横では、甘酒の振る舞いと写真展が開催されている。

さっぱりとした甘酒におろし生姜を落としていただく。
飲み過ぎていれば尚更だが、飲み過ぎていない今でも温かい甘さが快い。
脇田千帆1st写真展 「菊石 -手から生まれる酒-」
(名古屋学芸大学メディア造形学部映像メディア学科在学)

挨拶文
「小学生の頃、自分の住む地域について学習する時間に「菊石」の名を持つ酒があることを知りました。猿投山の天然記念物「菊石」を名に持つ酒とはどんな酒だろう、と子供なからに印象深かったのを覚えています。
それから大学生となり、ドキュメンタリー写真を撮っていた私は、ふと、この「菊石」のことを思い出しました。
「酒蔵を撮りたい。」
飲み会の機会はあっても、日本酒を飲む機会があまりなかった私にはとても興味深く、魅力的な世界だったからです。
撮り始めて私か惹かれたのは、蔵人の皆さんの手でした。
その日の気温や米の状態で味が変わってしまうという酒造りを、手から伝わる感党を頼りに酒を造り上げて行く姿はとても美しく感じました。
この写真を見て、蔵人の手の芙しさや、酒の香りを少しでも感じていただけたら嬉しいです。」

蔵で酒を造っている杜氏の姿を追っているが、手に焦点を当てているところが写真専攻の人らしい。
麹を優しく載せている指の写真があったが杜氏の姿を指で表したのは良かった。
テント前の掲示コーナーには、愛知県の新酒鑑評会の前部門入賞の新聞記事が掲示されている。
これに付いては、3月に記事を書いた通りだ。
「2011/03/22 愛知県酒造組合 平成23年清酒きき酒研究会審査結果」
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/e/b7a69f53f8cc72ebc33b0048720b35ab

猛暑と厳寒に襲われたこの酒造年度の苦労話が書かれているのが面白い。
『愛知県酒造組合 きき酒品評会
全4部門で入賞
菊石杜氏 新井康裕さん
愛知県酒造組合主催の品評会「清酒きき酒研究会」の審査結果が3月22日に発表され、豊田の地酒「菊石」の浦野酒造が全4部門で入賞した。
この品評会には、(1)純米吟醸酒、(2)吟醸酒、(3)純米酒、(4)本醸造酒の4部門があり、審査員は名古屋国税局鑑定官や食品工業技術センターの研究員、蔵元ら。県内の酒蔵から各部門にそれぞれ42~60点の出品があった。
菊石は、純米吟醸酒で2位、吟醸酒3位、純米酒8位、本醸造酒7位と全部門で入賞。表彰は杜氏名で行われており、新井康裕杜氏(37)が表彰式に出席した。
新井杜氏は今シーズンを「とにかく造りにくい年でした」と振び返る。
理由は酒米だ。昨夏の猛暑の影響で外側が崩れやすく中は固い「20~30年に1度の扱い難い米」だったという。若い新井杜
氏にとっては初めての経験だったが、吸水時間や蒸し時間の調整楼でのりきった。1月の寒さで活性を保つのも苦労したそうだ。新井杜氏は「この経験は必ず今後に生きます」と嬉しそうだ。
純米吟醸酒の部で2位になった酒は3月17日に発売された限定600本の「菊石袋濾し純米吟醸生酒」。お早めに。電話45-00200 【新見克也】
浦野酒造の分析室で日本酒度計をみつめる新井さん。甘さ・辛さ酸度・旨み、アルコール度数の分析を毎日行い、バランスの良いところで搾る。
「この部屋で毎日悩んでいるんです」と新井さん
』(矢作新報 2011/4/1付)
テントの奥の桜の方に行ってみる。


例年の蔵開放では満開の花を楽しませてくれる100年の古桜も今年は葉桜になっている。
偶には、花でなく花蘂を楽しむのも興趣あることだ。

若葉と花蘂、陽に輝く緑と花蘂の赤が対照的だ。

よく見ると花蘂の間に未だ緑色だが、さくらんぼを付けているのが見えた。

テント前の植えこみには、色とりどりのパンジーが植えられている。

昨日の雨に洗われて、紫陽花の葉が光り輝いている。
生命感に溢れた緑だ。
5月になり、掲示板に書かれていた春本番の限定酒「薫る風」が出荷される頃には、薄紫色の花を付けていることだろう。
【データ】
会社名 浦野合資会社
銘柄:菊石
所在地: 愛知県豊田市四郷町下古屋48
(愛知環状鉄道「四郷駅」下車 北へ徒歩7分)
TEL: 0565-45-0020
FAX: 0565-45-0098
営業時間: 月~金9時~18時
土曜10時~15時
(日曜、祝祭日休業)
URL: http://www.kikuishi.com/index.html
上記公式サイトの通信販売で季節限定酒・通年酒とも菊石を入手可能だ。