今帰仁城の夜桜のライトアップは、18:00から、それまでの間に今帰仁酒造の蔵見学に行く。
日本酒の蔵を見学したことは数多いが、自分でも意外だが泡盛の蔵見学は初めてだ。
泡盛の蔵も日本酒と同じで見学がOKなところとそうでないところがある。
今回、車で移動する方面から、飲んだことのある泡盛の蔵から2箇所見学をお願いすることにした。
一つは、「千年の響」、「美しき古里」の今帰仁酒造ともう一つは「琉球」の新里酒造。いずれも後口の良い泡盛である。
日本酒の製造工程は、大体のイメージが頭の中にあるが、泡盛は全くない。蒸留の工程は日本酒にはないので、日本酒と違う点を中心に下調べをして出かけた。
【基本的な泡盛の製造工程】
各工程は蔵毎に独自の手法が取られているため、常に同じとは限らず、各酒造所の造りの違いがその銘柄の特徴を創りだすことになっている。
1.酒米
原料の酒米には、硬質米のタイ米を砕米にして使用する。
タイ米は昭和初期以降、泡盛醸造の最適な米として、全酒造所で使われている。
泡盛の原料としてのタイ米を使う主な理由は、
・硬質米のためさらさらしていて、米麹にしたときに、硬質で長い粒のインド種(インディカ米)であるタイ米は、麹菌の付きがよく、酒にコクと旨みを出し易い。
・水や酵母を加えてアルコール発酵させるときの温度管理がしやすい。
・他の米に比べ、アルコールの収穫量が多い。
2.洗米・浸漬
原料米に付いている糠を洗い流す。
その後、水を溜め、蒸すのに必要な水分を原料米に浸漬させます。
3.蒸し
浸漬した酒米を水切りした後、蒸気で原料米を蒸す。
洗米・浸漬・蒸しの工程は、回転式のドラムを使う場合が多いようだ、日本酒のように釜を使って蒸気で蒸すより機械化されている。
機械化を進めている蔵では、連続蒸米機を使用しているのは日本酒蔵と同じ。
4.種付け
放冷機で蒸し米を適温まで冷まし、黒麹菌を散布し種付けを行う。
日本酒は、麹菌として黄麹を使うが、泡盛では黒麹を使用する。
黒麹菌を使用する理由は、亜熱帯海洋性気候と呼ばれる温暖で多湿な沖縄の気候風土に拠る。
黒麹菌は繁殖の過程でクエン酸を大量に生成するため、雑菌による腐敗を抑えることができるという大きな特徴がある。
気温の高い沖縄では、さまざまな菌が繁殖しやすく、酸度の弱いもろみだと、空気中に浮遊する腐敗菌に負けて、腐造になる危険度が高い。
黒麹菌はクエン酸を生成するので、もろみが安定して腐りにくくなるので、気温の高い夏場でも醸造が可能になる。日本酒のように寒仕込みの必要はないのである。
黒麹菌は、原料である穀物のでんぷん質を糖化する酵素の力が強く、アルコールの収量を増やしてくれる能力を持っている。
5.製麹
黒麹菌を散布した原料米を製麹棚(三角棚)に移し、切り返し等の温度管理をし、麹を造る。
麹づくりの方法は、若麹と老麹がある。
若麹は、菌糸の伸ばし具合を抑えて麹を造る。
老麹は、米の芯まで菌糸をしっかり食い込ませて造る。
どの方法を取るかは、酒造所によって、あるいは造る銘柄によっ変わってくる。
黒麹菌には、アワモリ菌、サイトウイ菌の2種類がある。
2つを混ぜて使うばあいもある。
製麹の時間は、基本的に約2日(40時間程度)が一般的だが、3日麹(約70時間)の方法を取る蔵もあり一様ではない。
6.醪
仕込タンクに米麹と水、酵母を加えて発酵させ、モロミを造る。
日本酒の造りと大きく違うのは、全麹仕込み行われる。日本酒では、三段仕込みが行われ、初添→仲添→留添と三回に分けて米麹がタンクに入れられるのが一般的である。
泡盛の全麹仕込みでは、一回ですべて麹米を仕込んでしまう。
酵母は、泡盛101号という泡なし酵母が一般的に用いられている。
果実酵母、花酵母、黒糖酵母などが使われる場合もある。
もろみ期間は、一般的には約2週間だが、低温発酵で少し長め期間を取る蔵もある。
もろみは、約2週間で度数18%前後のアルコールを生成する。
7.蒸留
アルコールが水より低温で沸騰する性質を利用し、発酵し熟成したもろみを蒸留機に入れて蒸留し、アルコール度数の高い泡盛を生成する。
蒸留方法には、単式蒸留と連続式蒸留がある。
単式蒸留は、もろみを、蒸留釜で熱し、アルコール分を含んだ蒸気を発生させ、蒸気を冷やしてアルコールを生成する方法であり、蒸留方法の中ではもっとも古くから行われている製法である。
連続式蒸留は、一度蒸留した液体を、さらに何度も連続して蒸留する方法である。
蒸留を繰り返すほど純粋なアルコールに近い蒸留液を造ることができる。
さらに、単式蒸留法は、常圧蒸留と減圧蒸留に区分される。
常圧蒸留は、常圧で蒸留する方法であり、減圧蒸留は釜の内部を減圧して蒸留する方法である。
常圧蒸留は、蒸留機が歴史に登場して以来昔から現在まで行われてきた伝統的な手法であり、蒸留したいもろみに熱を加え、その蒸気を集めるシンプルな蒸留の方法だ。
常圧蒸留で造られた泡盛は、その蔵の個性があり、古酒づくりに適しているので、常圧蒸留で造った泡盛を好む人が多い。
減圧蒸留は、蒸留釜の内部の気圧を下げて蒸留する方法。気圧低いところでは沸点が下がり蒸留が楽にできる。
泡盛で使われる減圧蒸留機は、40~50度で沸騰する様に設計されている。
気圧を下げて蒸留すると、クセがなく、口当たりも軽やかで、香りもフルーティーさが全面に出てきます。
減圧蒸留では、沸点が低いために、酒本来の個性やコクの素となる高沸点成分の気化を抑えられるので、雑味が抑えられ、淡麗なソフトな口当たりの泡盛になる。
常圧蒸留、減圧蒸留それぞれに良い面があるので、蔵はそれぞれの商品設計で、両方の方式を使い分けでいる。
8.貯蔵
蒸留された泡盛は蒸留直後のアルコール度数は50度前後であるため、それに加水をしてアルコール度数を調整し、熟成させる。
熟成容器はは、ステンレスタンクが一般的だが、甕、ホーロータンク、樽を用いる蔵もある。
熟成期間は、一般酒でも、だいたい半年から1年は熟成させる。
古酒は、最低でも3年間熟成させてから用いられる。
9.詰め
貯蔵年数やアルコール度数、容量や容器等によって商品が区別され、出荷される。
【今帰仁酒造蔵見学】
今帰仁酒造は、海の近くに在った。

ほぼ、予約した時間通りの到着になった。

入り口を入って、すぐ左が事務所になっており、製品を購入することもできる。
ご挨拶をして、すぐに蔵内をご案内していただいた。

酒米は、タイ米を砕米にした物。

ドラムと呼ぶ機械で、洗米・浸漬・蒸し・種付けの工程まで自動的に行っている。

製麹を行う三角棚。

中の米麹。

切り返しは、機械ではなく、鋤のような道具で行う。

出来上がった黒麹による米麹。

仕込みはステンレスタンク。

仕込んだばかりのもろみ。
黒麹のため日本酒のもろみと違い黒い。

蒸留機。常圧・減圧両方できる。

貯蔵タンク。

樫樽貯蔵。

製品タンク。

屋外の貯蔵・熟成タンク。

高級酒の熟成は甕・樫樽で行われている。
甕は、タイ、ベトナムで造られたものに、外釉を掛けたもの。

瓶詰め機。
【感想】
初めての泡盛の蔵見学は面白くまた意外でもあった。
(1)酒造りは、土地の風土に依存している事がよくわかった。
沖縄のように暑い土地では、日本酒の寒造りは適さない、もしするとすれば蔵全体を冷蔵庫にする必要がある。
沖縄での醪造りは、黒麹を使いクエン酸を生成させ腐造を防ぐ合理的なものだ。
造り方も全麹の一段仕込みで手間のかからない工程だ。
(2)工程が日本酒に比べ手間をかけなくて済むことから、自動化・機械化が進んでいることには驚かされた。
今帰仁は沖縄でも北部に位置し、地方であるが、工場は機械化が進み、蔵内は日本酒の蔵の多くに比し清潔できれいである。
(3)醪期間が短いため、出来たての泡盛の香りや味は刺激的だが、それを何年も寝かせて熟成させる事によって泡盛独特のまろやかな味を生み出している。
日本酒のように搾りたては適さない酒であるが、常温で放置しても劣化するどころか熟成が進みまろやかな古酒になっていく羨ましい酒質である。
日本酒も古酒の世界は存在するが、熟成の過程は一様ではなく、管理が難しい。逆に言えば、その難しさが魅力なのだが。
(4)面白かったのは、事務所に戻り、沖縄でしか入手できない酒を購入したとき、値段がカタログ価格より安かったことだ。
日本酒の蔵では、このようなことはない。
「夢幻の宴 30度720ml」
甕貯蔵の長期熟成古酒100%の酒で、2006年モンドセレクション銀賞受賞酒だ。
カタログ価格では2140円だが購入価格は1601円。

加えて見学記念に「美しき古里 30度 300ml」2本をプレゼントいただいた。
忙しい中、手間と時間を煩わせた上におみやげまで頂戴して申し訳なく、ありがたい事である。感謝!!。
【今帰仁酒造】
会社名:有限会社 今帰仁酒造
.所在地:〒905-0401 沖縄県今帰仁村字仲宗根500
.電話番号:0980-56-2611
.FAX:0980-56-4598
.設 立:昭和23年
.従業員:45名
.代表取締役:大城善男
.e-mail:order@nakijinshuzo.jp
.HP: http://www.nakijinshuzo.jp/index.jsp
今月末に、田舎者さんにお邪魔しようかと考えています。
そこで、代行運転の件なのですが、ご利用した会社名等を教えていただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。