日本酒3連投の最終日は、岐阜の中島屋さん主催の「季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」だ。
毎月あるこの会のうち春夏秋冬年4回開催される会場が「ざっぶん」の会は日曜日の13:00から始まり終わるのは酒が無くなるまで。通常酒が無くなるのは19:00頃になる、日本酒のマラソン宴会、耐久レースである。
しかし、内容が濃いので楽しく、時間の長さをまったく感じないのは不思議でもある。
今日は夏の「ざっぶん」の会である。
夏は、蔵の方が毎年参加されるので、お話しを聞くことが出来る機会でもある。
料理は、夏・岐阜と条件が揃えば、決まりの鮎である。
今日はどうだろうか。
名古屋駅から東海道線に乗る。
時節柄、咳をする人を避けて、滅多に乗ることのない最前部に立ち、茶色い鉄さびが遠方まで伸びている中、鈍く銀色に光る2本のレールを思ったより高速で走り続けているのを見ていると、運転手が女性であることに気付いた。
軌道上の乗り物とはいえ、これだけ大きな列車を走らせ、多くの人命を預かる運転手を女性が務めていることに今の時代が在った。

岐阜駅前のロータリーの植え込みも緑が濃くなっていた。
少し前までは、散髪に行ってきましたというような風景だったが、夏を過ごして、枝も伸び、葉も茂り、地下の根も張っているようだ。
ざっぶんは駅から徒歩圏なので便利だ。
会場はまだ参加者は多くなかった。
受付を済ませ、定められたテーブルに座ると、ウエルカム心太が出てくる。
香ばしい香りのする、伝統的な酢醤油と胡麻の、夏の風物である。

席に座り、受け取った「利き酒メモ」の出品酒一覧を見る。
毎回この一瞬が楽しみである。
どんな酒が登場し、どんな巡り逢いがあるのか。
出品酒に番号をふってみると、蔵元持参のお酒も含めると、26銘柄もある。大変である。ペース配分を考える必要がある。
定刻の1時になり、主催者の挨拶で乾杯をして、いよいよ会が始まる。
【今日の出品酒】
出品酒のコーナーは、<乾杯>から始まる6つのステージに分けられている。
<乾杯>
(1) 梵 しぼりたて初雪 純米大吟醸 生酒 加藤吉平商店 (福井)

うすにごりの生酒。蔵で半年寝かせて出荷するもの。立ち香あり、甘いトロリとした入り口だが、次に発泡感のあるピリ辛が来る。中盤からスッキリと切れて辛くなる。終盤に吟香あり、後口は辛味系。評価8.0。
<本日ご参加蔵元のお酒>
(2) 三千盛 純米大吟醸 にごり生酒 三千盛 (岐阜)
立ち香はあまり感じない。すっとはいる入り口、辛味あり、酸のふくらみはなく切れ味良い。うすにごり酒だがトロ味とかはなく、発泡感は感じないが、澱の少しざらついた舌触りがある。キレが良く、後口も辛味系。評価8.0。
(3) 鯨波 純米 恵那醸造 (岐阜)
入り口は甘く、次に透明感のある酸のふくらみがある。次第に終盤に向かい辛くなり、後口はやや重い。下ぶくれの形。評価7.0。
(4) 鯨波 純米吟醸 恵那醸造 (岐阜)
立ち香あり、酸のフルーティなふくらみがある。中盤辛いが、後半の重さはない。終わり前に吟香あり、後口は良い。評価8.0。
(5) 榮一 一滴入魂 純米 (株)林本店 (岐阜)
立ち香あり。軽い入り口、次に酸の透明なふくらみがあり、途中から甘味がある。後半やや重くなるが、後口に癖はない。評価8.5。
(6) 房島屋 純米65 本生<7号酵母・H18BY> 所酒造(資) (岐阜)
立ち香は熟した果実臭。甘い入り口。酸はスッキリしている。後口は辛味系で、少し残るものがある評価8.0。
<冷やで、燗で楽しむお酒>
(7) 一念不動 純米吟醸 強力 関谷醸造 (愛知)
軽い立ち香。スッキリした入り口、軽い酸味の後、後半辛くなる。後口重い。全体の印象が硬い。評価7.0。
肴としてはパスタ・生ハムに合った。単独より食中酒向きか。
燗: 酸のふくらみが出て、柔らかさが出る。燗向きである。
(8) 益荒男 山廃吟醸 鹿野酒造 (石川)
立ち香はない。スッキリした入り口、酸はふくらみはないがフルーティで、キレが良い。後口は良い。評価8.0。
燗:ふくらみが増すが全体の印象は変わらない。
(9) 芳水 山廃仕込み純米 芳水酒造 (徳島)
"立ち香はない。スッキリとした入り口、酸っぱい酸。後口は重い。評価7.0。
燗:入り口のふくらみが出てバランスが良くなる。
<本日の吟醸酒>
(10) 京ひな 五億年 純米大吟醸 酒六酒造 (愛媛)
入り口軽く甘い、バランスの良い広がりが続く。吟醸酒らしい世界である。バランスが良く、偏りがない。後半苦味が底にあり締めている。後口は軽い辛味系。評価9.2。

(11) 清泉 亀の翁 純米大吟醸 久須美酒造 (新潟)
甘い入り口、酸の厚み有り、味の厚みが長く続く。後口は辛味系。評価8.5。
<比較試飲しましょ>
(12) 東一 純米 山田錦 H20BY 五反田酒造 (佐賀)
入り口透明感のある酸、酸はスッキリとした酸。後口は癖はない。評価8.0。
(13) 東一 大吟醸 H20BY 五反田酒造 (佐賀)
酸味のある味、発泡感がある。後半香りがある。後口は辛味系。評価8.5。
(14) 東一 純米大吟醸 H20BY 五反田酒造 (佐賀)
入り口はスッキリ、酸はキレが良く、透明感がある。後口のキレがよい。評価8.8。
(15) 東一 大吟醸 雫搾り H19BY 五反田酒造 (佐賀)
仄かな香。軽い入り口、丸味のあるバランスの取れた厚みある味。広がりはなく、味が中に寄る印象。後口の癖はない。評価8.5。
(16) 長珍 純米大吟醸生詰 H20BY 長珍酒造 (愛知)
立ち香はあまり無い。軽い甘い入り口、バランスの取れた味だが、まったりとした丸味がある。後口の癖はない。評価9.0。

(17) 長珍 純米大吟醸生詰 H19BY 長珍酒造 (愛知)
酸のふくらみがスッキリとしてスピード感がある。後半に軽いバナナ臭。後口は軽い辛味系。評価8.8。
(18) 長珍 純米大吟醸生詰 H16BY 長珍酒造 (愛知)
入り口軽い、酸はスッキリしているが次第にふくらみ、後半にかけて辛味が押す。後口は辛味系。下ぶくれの形。評価8.5。
(19) 天狗舞 旨吟 吟醸酒 平成17年7月瓶詰 (株)車多酒造 (石川) "立ち香は化学臭、皮のような香。甘い入り口、酸のふくらみの後、後半にかけてやや老香風の香。舌触りは滑らかであり気持ちよい。残り香も化学臭。評価7.0。
燗:立ち香の癖が弱くなり、飲みやすくなる。酸のふくらみが増すので、燗向きである。
<本日ご参加の蔵元様ご紹介とご持参酒>
(20) 三千盛 小仕込み 純米大吟醸 三千盛 (岐阜)
酸のふくらみ.スッキリ感。
(21) 三千盛 れいじょう 純米大吟醸 三千盛 (岐阜)
フルーツの香。甘酸っぱい味。後半辛味が増す。後口は辛味系。
(22) 揖斐乃蔵 大古酒 1986年 純米吟醸 所酒造(資) (岐阜)

1986年製造の23年物の大古酒、タンクで囲ったもの。立ち香はカルメラの香。甘い入り口、酸はあるがスッキリとしている。透明感があり、雑味は感じない。
房島屋所杜氏の話では、5年程前から俄然良くなったとのこと。常温熟成古酒に起きる解脱があったのだろう。だるま正宗より軽い印象で、透明感・雑味の無さは大古酒の特徴である。
(23) 榮一 特別限定夏仕立 生酒 (株)林本店 (岐阜)
蜂蜜の甘い立ち香。軽い入り口、酸は爽やかで透明感があり、夏仕様を感じる。後口は軽い辛味だが癖はない。
先週の日本酒の会の「夏純・夏吟」の中に入れたかった酒。後藤杜氏の話では今年より来年の夏を目指しているとのことだった。夏向きの日本酒が着々と増えている。
(24) 天領 天涼 本醸造生貯蔵酒 天領酒造 (岐阜)
軽い入り口。甘味系の味、ふくらみはあるが味の厚みはない後口は辛味系だが、癖は感じない。
(25) 初緑 特別純米 ひやおろし 高木酒造 (岐阜)
立ち香あり、甘い入り口、酸の厚みがある。飲みやすい酒で、無ラベルの瓶で回っていたので、一瞬蓬莱泉の酒かと思ったが、初緑であった。
(26) 鯨波 大吟醸 平成17年12月瓶詰 恵那醸造 (岐阜)
甘い入り口。酸味の膨らみあり、後半はピリ辛、底に苦味が締めている。雑味無く、透明感のある世界で、熟成味・香はまったく感じない。温度管理がしっかり行われているのだろう。
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