岐阜の酒の中島屋さん主催の日本酒の会に参加した。平日水曜日の夜8時からの会は、時間的にシンドイが、今回は美濃天狗特集で尚且つ会場が「楮(こうぞ)」である。 「ざっぶん」と「楮」が会場の場合は、力の籠もった料理が提供されるので、シンドイなどと言っていられないのである。
19時半頃、岐阜駅に着くと、既に夜の帳が降り始めているが、まだ空の一角に明るさが残っている。 夏至の季節、最も長い昼の所為か、まだ宵の風情である。季節の美味しさと日本酒をいただくには、お似合いの何かを感じさせる黄昏時である。

岐阜駅前も整備が進み、数年前の、大げさに言えば、荒涼とした光景も、何か洗練された都会の空気を感じさせる。 新しくたったタワービル、駅前の緑地空間が、夜を控えた照明に照らされている。
会場の楮に着くと、会場は離れの方になっていた。当初12名の募集だったので、本店かと思ったが、その後参加者が増え、離れの貸し切りになったようだ。
もう多くの参加者が着席していて、今日の主賓の美濃天狗林社長も着席されていた。 4月の飛騨美濃酒蔵の集いでは、県知事賞受賞のお祝いを申し上げたが、2ヶ月後の今日、全国新酒鑑評会金賞受賞のお祝いを申し上げる事が出来たのは幸いであった。
今日の会はいつもとは、少し違った会になっている。美濃天狗の金賞受賞の記念祝賀会なのである。 お酒もお料理も、其処に狙いを定めている。
午後8時になり、いよいよパーティの始まりである。中島屋店主の開会宣言の後、美濃天狗林社長の挨拶が始まる。 ・中島屋さんとは20年来の付き合いである。 ・金賞については、中島屋さんには永くお待たせしたが、漸く今年受賞し、非常に喜んでいる。ホッとした気持ちである。 ・5年前に杜氏が変わり、今の杜氏は非常に造りが丁寧で、細かい作業が増えている。手を掛けた造りが金賞の背景にある。 今、77歳だが、もうしばらくは来て貰う事になっている。

各テーブルには、鶏のすがた焼が置かれており、金色の幟に「おめでとうございます」と書かれている。

挨拶が終わると、林社長の金賞受賞記念祝賀会の入刀式である。無事に入刀が終わると、祝賀会の始まりである。
実際は、18本の美酒と楮の創作料理が次々に提供されるので、目が回るが、時系列に記載すると読む人の目も回るので、日本酒と料理は、分けて記載することにする。
【出品酒】今日の日本酒のテーマは美濃天狗である。渡された「利き酒メモ」に目を通すと、金賞受賞酒を中心に、美濃天狗の水平・垂直飲みやろうという企画である。 分厚い企画である。
<乾杯>
①美濃天狗 美濃のつらら酒 吟醸うすにごり H20BY
立ち香あり。酸味・発泡感のある味だが刺激的ではない。発泡感と辛味が今の季節に合う。後口は辛味系だが、切れがよい。 春の花の頃のうすにごりも良いが、このうすにごりはスッキリとした発泡感が季節の重さに合っている。
<今夜は『美濃天狗』楽しみます>
②美濃天狗 本醸造 H20BY
立ち香はない。丸い舌触り。酸味あるがスッキリとした酸である。後口の癖はなく良い。 美濃天狗は、以前からそうだが、本醸造クラスの酒も本格的である。
③美濃天狗 純米吟醸 H20BY
スッキリとした酸の味が爽やか。後口は癖はないが、ピリ系。切れよい。
④美濃天狗 一滴水 吟醸大古酒<限定>
立ち香は、仄かな老香があり、複雑な香りがある、ラッキョウ漬けのような酸の香が隠れている。口に含むと丸い舌触りがあり、甘味・酸・辛その他複雑な味が層をなしている。苦味・渋味は表にはなく感じない。後口の癖はないが、残り香に仄かな熟成香を感じる。 この酒は、中島屋店主が蔵で眼にした20年分の大吟醸・吟醸のお宝を蔵元と企画・商品化したものである。 数多くの古酒がブレンドされたものであり、香り・味が何層にも積み重なっており、一枚一枚層を剥いでいくとその年月の厚みを感じることが出来る。 二度と入手できない限定酒でありながら、価格も720mm1400円弱なので、古酒・熟成酒好きな人には、ありがたい。
⑤美濃天狗 一滴水 吟醸雫生 H20BY
立ち香はあまり感じないが、揮発性のものが立っており鼻をくすぐる。甘味・酸味は無く、辛口系だが厚みのある透明な味。後口は辛味系。
⑥美濃天狗 一滴水 吟醸雫ひやおろし H19BY
立ち香はない。広がり・丸味がある世界。味の癖はない。後口も癖無く、良い。
⑦美濃天狗 かくれ里 大吟醸生原酒 2007
大吟醸らしい広がりのある世界。スッキリとした味わいで落ち着きを感じる。暴れ強引さが無く上品。
⑧美濃天狗 大棟梁 純米大吟醸生 酸味系の豊かなたっぷりとした味。辛味・苦味もある。後口はピリ辛。
⑨美濃天狗 鼻高々 大吟醸 <H20金賞受賞酒>
立ち香はあまり感じない。広がりのある大吟醸の世界。酸・甘・辛のバランスの取れた豊かな味、苦・渋はあまり感じない。後口は癖はないが、ピリ感が後口を締める。
<「天の戸」の純米酒>
⑩天の戸 純米吟醸 ランドオブウォーター
天の戸の「美し稲」は飲んだことがあるが、これは初めてである。 偏りのない味。透明なること如水だが、厚みのある透明感。後口も癖無く良い。
⑪天の戸 純米吟醸 五風十雨(ごふうじゅうう)
印象記録漏れ。
<今日の贅沢・吟醸酒飲み比べ>
⑫正雪 純米大吟醸 備前雄町
上に軽く下に重い印象。酸の厚みがある。後口はピリ辛系。
⑬蓬莱泉 一念不動 純米大吟醸
五味のバランスの取れた味。味・旨味の厚みがある。広がりはあまり感じない。後口も癖無く良い。
⑭南部美人 限定大吟醸
中汲み甘い入り口、広がりがあるが、味の厚みも大きい。辛味も感じる。苦味はあるが浮かず下にあって締めている。
<熟・醇・を飲む>
他の会には滅多に無い貴重なコーナーがこの会にはある。それが、中島屋の秘匿蔵にある古酒・熟成酒が満を持して登場するこのコーナーである。 今日は、美濃天狗のH5,H7,H12,H19が登場した。新酒だけでは解らない、美濃天狗の幅・奥行きを体感することが出来る。
⑮美濃天狗 美濃のつらら酒 吟醸うすにごり 2007年12月瓶詰
酸の厚みがあり、2007年だが発泡感がありピリピリとした味わいあり、生き生きしている。?の新酒より酸・味が厚い。

⑯美濃天狗 かくれ里 大吟醸 H12年12月瓶詰
酸の厚みのある味の後、甘味がある。後口は辛味系。2007年のかくれ里より味が厚い。
⑰美濃天狗 超吟 大吟醸 雫 H7年8月瓶詰
仄かな消毒・化学臭。酸の厚い味の後辛味が続く。後口は辛味系。残り香も立ち香と同様。
⑱美濃天狗 吟醸 生原酒 H5年3月瓶詰
立ち香は熟成香。甘・辛の厚みのある味わい。後口はピリピリと辛い。 15年物の古酒だが、押しの強さがあり、元気で全く老いていない。美濃天狗の力強さを感じることが出来た。
美濃天狗を中心に18種類利く事が出来た。南部美人、一念不動、天の戸も良かったが、矢張り美濃天狗の水平・垂直飲みが面白かった。 今日の経験で美濃天狗の奥行きが見れたのは収穫だった。
美濃天狗の酒は、香り・甘味・酸味・辛味を押し立てて自己主張をする酒ではない。バランスの取れた透明感のある味は大吟醸から本醸造まで一貫している。
利き酒の場では、他の自己主張の強い酒に混じると、おとなしく平凡な印象を持つ人が多いかも知れない。
今日の美濃天狗体験は、そんな美濃天狗の印象を一変させた。美濃天狗は、一見のおとなしさとは違い力のある強い酒であることが解った。 H5の古酒の力強さはどうだろう。15年を経てへたること無くまだ元気である。 H12のかくれ里は、新酒より酸も甘味も辛味も旨味も厚く濃い。造りがしっかりしている為、熟成に耐えるのだろう。
それに、温度によって味の変化があり、温度で味を楽しむことが出来る酒であることも解った。 これは、味が厚いので温度変化に対応できる味の幅があるからだろう。
昨年・今年と上昇気流に乗った美濃天狗が来年どんな変化を見せるか楽しみである。
あんな棒きれのどこがいいんでしょうか。
普段は犬派ですが、この猫たちは可愛いです。
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