岐阜の中島屋さんの主催する会は毎月行われるが、年に4回、春夏秋冬、日曜日の昼から開催される。この日は会場は決まっており、『和食採「ざっぶん」』である。筆者は勝手にこの4回の会を「ざっぶんの会」と名付けている。
前にも書いたがこの会は、1時から始まり終了時刻は定められていない。酒が無くなるまでである。通常夜の7時頃になることが多いので、時間6時間のマラソン宴会である。
ざっぶんの心づくしの料理をいただきながら、中島屋さんが用意した銘酒の数々をテーマに沿って飲み続けていく事になる。
酒に強いと自負している人でもペース配分を間違えたり、体調次第では沈没する危険性に満ちた自己管理能力を求められる宴会である。
当初20名位を予定したがどうしても参加したい人が多く、結局26名になり、ざっぶんに参加者が溢れた宴会の様子は、中島屋さんの主催する酒楽六舗のブログに掲載されている。
筆者は明日の仕事を考えて7時頃に戦線を離脱したが、ブログに拠れば、その後カラオケ、3次会のカクテルバーまであったそうである。タフな人たちである。
http://blog.shuraku6.com/
料理、出品酒の写真については、上記ブログをご覧いただきたい。
料理で説明を要する物がある。笹の葉に乗せられた一見白魚の様な物である。

出てきた時は白魚かと思ったが違う。平たくて長い。

右手で箸でつまみ、持ち上げながら、左手のカメラで撮影するという芸当なので、後ピンになっているが、雰囲気はお解りいただけると思う。
透明で透けて見える平たい物体、何だろうと思うと下の先端に小さな目が二つ付いている。
同席した識者のお話では穴子(あなご)の稚魚だそうである。
食感は見た目以上にしっかりしているが、味わいは白魚と同様淡く儚い味である。如月の味わいである。
帰って調べてみると穴子の稚魚は「のれそれ」というらしい。
そう言えば、昼食に行く和食の店の看板に「のれそれ」と書いてあり何だろうと思った事があった。
『ー名前の由来ー
アナゴの稚魚は、関西では、「べらた」高知県では「のれそれ」と呼ばれています。
「のれそれ」は漁師さんが地引網を引くと、高知県で有名なドロメ(鰯の幼魚)と一緒に網に掛かって来るのですが「ドロメ」は弱い魚ですので、網に掛かるとすぐ死んでしまい、網にくっついてしまいます。
その「ドロメ」の上に「乗ったり、それたり」しながら網の底の方へ滑って行く様子が「のったり、それたり」→「のり、それ」→「のれ、それ」→「のれそれ」と言うふうになり、「のれそれ」と言われるように、なったそうです。』
(旬・食材【魚・魚介類・野菜・果物】料理レシピブログより転載)
http://gourmetichiba.blog51.fc2.com/blog-entry-56.html
【今日のお酒】
今日のお酒も質量共にすごかった。
寸評は筆者個人の独断である。
<乾杯の酒>
①三千盛 純米吟醸にごり酒
発泡性辛口にごり酒。酸味の厚いにごり酒ではなく、スッキリとした味。後口はピリ系。花見酒に好適。
<比較を楽しみます>
-獺祭-精米割合の差を比較する。
②獺祭 純米吟醸50
バランスの取れた適度な厚さの味。酸はまるい、苦辛はあるが底に隠れている。
③獺祭 純米吟醸45
香りはあまりない。スッキリとした酸、後口に苦辛が残る。
④獺祭 純米吟醸39
スッキリとした入り口、あまり膨らまない酸、底に苦辛。
精米歩合の差は筆者の味覚レベルでは良く判らない。ざっくり言えばどれも獺祭の世界であり嫌味がない酒であるが、敢えて筆者の好みでは、精米50%の②を推したい。
-七本鎗-酒米のちがい、玉栄60%と山田錦50%。
⑤七本鎗 特別純米 減農薬玉栄 生原酒
発泡感のある新酒の世界。酸味系の味、後口はピリ系。
⑥七本鎗 純米吟醸 山田錦 中取り生原酒 バランスの取れた厚みのある味。特段の癖はない。後口も良い。
筆者の好みでは山田錦になってしまう。
-美濃天狗-生と火入の違い。
⑦美濃天狗 一滴水 吟醸 雫搾り 平成18BY 生
入り口甘く、次に酸の厚みを感じる。後口は辛味系。
⑧美濃天狗 一滴水 吟醸 雫搾り 平成18BY 火入
生に比し、スッキリとしている。酸は膨らまない。後口は次第に辛くなる。
新しい酒では生の方が美味いように思う。入り口に甘さが感じられるからだろう。しかし、スッキリ感、切れは火入れである。
新しい物は生か火入れ、年単位での熟成を考えると火入れということになろうか。
-玉柏-
⑨玉柏 純米 むかしのまんま
香りはないが、バランスの良い酸の味で癖を感じない素直な世界。後口も良い。
⑩玉柏 あんとん燗
飲み逃したか、記録印象が飛んでいる。
むかしのまんまは良いお酒である。今回で4回目か5回目だが、いつ飲んでもバランスの良い酒である。
価格から考えれば晩酌の推奨酒である。
-東一飲み比べ
⑪東一 純米 山田錦 生酒
発泡感のある麹の味のある新酒の世界。後口はよい。
⑫東一 大吟醸 生酒
スッキリとした入り口。ふくらみのある大吟醸の世界。発泡感もあり、生き生きとした新酒の世界。後口良い。
どちらも新酒らしさを感じる美味い酒である。
大吟醸は吟醸酒の広がりと新酒の生き生きとした酸の厚みが適度に調和して、二兎を追うことに成功している。識者もうまいと仰った。
<今日の贅沢・大吟醸飲み比べ>
⑬南部美人 初ばしり 大吟醸
麹の味のする霞酒。スッキリとした世界。酸は薄めで柔らかい甘苦の味。
⑭蓬莱泉 春のことぶれ 純米大吟醸
入り口甘く、直ぐバランスの取れた酸の味、味は厚みがあり、後口も良い。
⑮黒龍 大吟醸 しずく
スッキリとした入り口、次にバランスの取れた透明感のある厚み、偏り無い。後口も良い。
春のことぶれはいつもながら上手く造られている。
黒龍は世の評判程筆者は評価していないが、このしずくだけは別である。仁左衛門よりこちらを取りたい。
<熟・醇を飲む>
⑯芳水 山廃純米無濾過生原酒 平成18BY
カラメル臭、酸が豊か、香りが色々あり、化学臭も感じる。後口はよい。
⑰芳水 山廃純米無濾過生原酒 平成19BY
香りはあまりない。酸が豊か、甘辛、刺激的なところはない。後口はよい。
⑱呉春 特別吟醸 平成10年10月瓶詰
香りに特徴がある。老香+化学臭の香り。味はスッキリしているが、甘く酸味もあり透明感がある。後口はピリ辛。
⑲芳水 淡遠 純米吟醸 平成3年瓶詰
17年物の古酒だが老香はない。酸味があり、その後複雑な味がある。残り香にカラメル臭がある。17年の熟成を感じさせない味。後口は苦くも、辛くもない。
17年物の芳水はこの会でしか飲めない代物。ビンテージである。 造りがしっかりしている所為かまだ酸がへこたれていない。更に本熟成させてみたい気がする。
後口が煙のように消えるようになるような気がする。
<参加蔵の差し入れ酒>
⑳玉柏 仕込10号 飛騨誉50% 純米
蔵元やまださんの山田社長が特別に持参いただいた酒。これから世に出る酒である。
甘い入り口の後、酸味系の味、後半甘苦を感じるが、後口はピリ辛系。
新酒らしい活発さのある酒。
21. 三千盛 朋醸 純米大吟醸
熟成酒の風格あり、落ち着いた旨みのある味である。こなれた酸と旨味が中心だが途中甘みも感じる。後口は甘いピリ味。
恒例の三千盛さんの蔵開きが3月23日に開催される。試飲・蔵見学・イベント・食etc盛りだくさんのバランスの取れた蔵開放である。楽しみである。
ざっぶんの会の出品酒の多彩さを消化するには時間が掛かる。
今日も色々刺激的であった。
日本酒はまだこれからである。