岐阜の中島屋さん主催の日本酒の会に参加した。
今回は新年会である。8時からなので仕事を終えて名古屋から駆けつけても十分間に合う。
第212回季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い
日時: 2008年1月23日(水) 午後8時より10時頃まで
場所: レンタルライブラリー「フィールド」
岐阜市美殿町27
Tel.058-262-7083
岐阜駅から真っ直ぐ長良川方面に歩く、いつもの会場のざっぶん、楮より遠い。
十六銀行柳ヶ瀬支店を右折、2本目の道を左折、最初の四つ角がフィールドである。地図を記憶して歩くと間違いなく着いた。
建物は平屋の住宅風の建物であるが、入り口に暖簾が掛けられているので住宅ではないことが判る。

暖簾をくぐりガラス戸の磨りガラスを開けると目の前には、雑然とした空間が広がった。
居酒屋でもなくレストランでもない、喫茶店のような古本屋のような雰囲気である。
正面の壁にはTVが埋め込まれており、左にはCDが並んでいる

右の方には本棚があり、棚に収まりきらない本は、通路の床に平積みにされている。丸で古書店である。

漫画があるかどうかわからないが、目に入った本は堅い本ばかりである。
塩野七生、戸板康二、山本夏彦、澤地久枝...関係があるような、無いような本達が並んでいる。
別の棚には映画関係の本が目についた。背表紙を見ているだけで疲れる書棚である。

通常は、今は現在である。今と現在は一致している。時は流れている。刻一刻、今および現在は流れている。
ある場所に行くと現在が今ではなくなる処がある。現在が過去のある時にタイムスリップしてしまうような場所がある。そこには濃密なノスタルジックな空気が満ちている。映画で言えば、寅さんとか3丁目の夕日、フィールドはそんな場所である。
入り口に近いところに四角いテーブルがあり、奥の書棚の前に狭い机があり、合計14名の席がある。今日はホームパーティの雰囲気だそうである。
主催者の西川氏の他は先客が1名。広い方のテーブルに座り、コートを脱いでいると、間もなく続々と参加者が集った。
開始時間の8時になり、主催者の挨拶に続き、美濃天狗のつらら酒で乾杯、新年会は始まった。
【今日の酒】
配布された利き酒メモを見ると、今日も新酒から古酒まで、本醸造から大吟醸までの銘酒が勢揃いしている。
昨年から気になっている「京ひな」の銘柄が5銘柄もある。楽しみである。
(評点は、個人の嗜好による独断であり、会全体の評価でないことをお断りしておく。)
<乾杯>
①美濃天狗 美濃のつらら酒 純米吟醸
八百津産の亀の尾60%精米
純米吟醸おりがらみ。酸味と炭酸の味、底に苦辛がある。残り香はフルーツ梨の香り。評価8.0。
<新酒 しぼりたて生のお酒>
②鯨波 純米 無濾過生
スッキリした入り口。平たい味。残味は苦味系。評価7.5。
③鯨波 純米吟醸 無濾過生
バランスの取れた丸い酸。透明感あり。後口は軽い苦味系。評価8.0。
④松の司 楽 純米吟醸 新酒生
山田錦60%精米。
スッキリとした酸。後口は微かな苦味。評価7.8。
⑤松の司 楽 純米吟醸 新酒生 2007
昨年の④を中島屋の冷蔵庫で1年熟成させたもの。
新酒に比べ、酸味が酷なり、味わいは滑らかになる。一年の熟成の差大きい。評価8.5。
⑥芳水 無為淡霞 純米吟醸無濾過生
麹の味のする新酒、酸味系の味。後口は微かに苦い。評価7.8。
⑦神亀 上槽中汲 純米 無濾過生
山田錦60%の純米。純米酒だが価格は4500円/1800ml。
酸味系のバランスの取れた味。舌触りはザラつく感あり。後口は苦辛無く良い。評価8.5。
<今日の燗酒>
⑧井の頭 純米酒
老香あり。旨みはある。燗向き。評価7.8。
⑨京ひな 伊予の燗酒 特別本醸造
バランスの取れた味、滑らかな舌触り。風格は吟醸酒の1年熟成を感じさせる風格、特別本醸造とは思えない。評価9.0~8.8。
冷やでも燗でも良さそうである。本醸造の本命。
<今日の贅沢・「京ひな」飲み比べ>
⑩京ひな 乃吟(かがやきのぎん) 辛口吟醸 スッキリとした入り口。酸は丸い。辛苦は無し。落ち着いた印象の酒。後口も辛苦無し。評価8.8。
⑪京ひな 隠し剣 純米大吟醸
⑩に比し、似た世界であるが、味の厚みがある。評価9.0。
飯米を使い50ヶ月の超長期発酵により造られているらしい。
大吟醸であるが価格は3100円/1800ml。

⑫京ひな 一刀両断 純米大吟醸
バランスの取れた味。端麗だが辛口。水の如しだが、味は厚い。評価8.8。
⑬京ひな 七星剣 純米大吟醸
バランスの取れた、丸みのある透明な味。大吟醸の確かな世界。底に苦味あり、後口は微かな辛味系。評価9.5。
王者の風格、価格も10000円/1800ml。
<熟・醇を飲む>
⑭松の司 大吟醸純米 黒ラベル2006
スッキリとした酸味系の味。まだ元気な麹の味後口は軽い辛味。評価9.0。
⑮松の司 大吟醸純米 黒ラベル2004年10月瓶詰
チーズの香り。酸味の厚いフルーティな酸。残り香は化学系。評価9.2。中島屋の冷蔵庫で3年熟成されたもの。
⑯黒龍 純米吟醸
五百万石55%の純米吟醸。
中島屋で11年間常温熟成されたもの。
冷や:老香有り。スッキリとした酸味の味。残り香は化学系。評価8.0。
燗: 酸がふくらみ、香りがカラメル系の香りに変わる。全体的にまろやかになる。評価8.5。
【今日の料理】
フランス風、日本風、イタリア風、家庭料理風、中華料理風様々の多国籍料理である。

フランスパンにフォアグラのペーストを乗せたもの。
フランスパンの枯れた旨みに濃厚なフォアグラの旨みが乗って美味しい。

前菜5種。 空豆、菜花のおひたし、胡麻豆腐、もずく酢、酒粕の和え物。

グラタン

赤味噌煮込みおでん。大根、こんにゃく、玉子、里芋、豚肉。
これは名古屋周辺の人間には、たまらないおでんである。どの酒にも、ピッタリ合った。
一見したところ3日燗煮込まれたように見えるが、実際は朝から1日で完成させたとのことである。
里芋がねっとり、まったりとして美味しかったのに驚いた。

パスタのサラダ。

五目あんかけ豆腐。

春雨のマヨネーズサラダ。

鰆の粕漬けの焼き物。

ピーマン・パプリカ・葱・鶏肉・カシューナッツの炒め物。
それぞれの素材の味がしっかりと残って美味しかった。
中華料理専門店のそれに勝るとも劣らない旨さである。
赤味噌おでんとカシューナッツと野菜の炒め物だけでも満足である。
名古屋経由で帰らなければならない。残念ながら、10時過ぎに中座してしまったので、この後出された料理はわからないが、此処まででも十分満足した内容であった。
【感想】
今日は、京ひなの酒を5銘柄飲むことが出来、ますます京ひなへの関心が高まった。
本醸造から大吟醸までどの銘柄も外れが無く美味しい。
昨年飲んだ金賞受賞酒も新酒であるにもかかわらず、他の金賞受賞酒と異なり、落ち着いた滑らかな熟成酒の佇まい風格であった。
今日の酒も、落ち着いて上品で荒々しさがない。
隠し剣は50ヶ月の超長期発酵により造られているらしいが、そこに秘密があるのかもしれない。研究の余地・楽しみのある蔵である。