あまり穏やかでないタイトルだが、自殺推奨ブログではない。
「Suicide Is Painless」は、映画「MASH」のテーマ・ソングである。MASHはMobile Army Surgical Hospital 陸軍移動外科病院.の略である。
久しぶりに「MASH」のDVDを取り出して、見てみた。
ロバート・アルトマン監督の初期の傑作である。
何度見ても面白い。
このテーマソングは、映画の冒頭のシーンと歯科医が自殺するシーンと2度歌われる。
冒頭は、ヘリコプターから地上の戦闘基地の俯瞰撮影から始まる。
時は、朝鮮戦争、場所は共産中国との戦闘の最前線である。
最前線から5kmしか離れていないMASHには、ひっきりなしに負傷兵が運ばれてくる。負傷した兵士を、助けるには、外科医も看護婦も不足している。
腕利きの外科医だが、戦場に耐えられるタフな医師3人が、本土から呼ばれ、MASHに赴任してくるシーンから物語は始まる。
ホークアイは止めてあったジープに荷物を載せると、同じくMASHに招聘され、たまたま出会ったデュークとジープに乗り込み、発進させる。
近くにいた、兵士がジープを盗まれたと叫んで追いかけるが、道の泥濘にはまって、転倒する。
なんと、二人は前線のジープを無断借用して、MASHに赴任しようとしているのである。
MASHに着いた二人はMASHの責任者に挨拶をする。責任者は、打ち合わせを済ますと、兵士にジープのナンバーを付け替えておけと指示する。なんともMASHは変わったところである。
これから、最後までブラックコメディーの連続である。些か悪のりした感じもしないではないが、悪戯・茶目・風刺・道化の感触があり許してしまう展開である。
前線から離れた癒しの場として日本が描かれている。其処では、芸者とお座敷を楽しみ、ゴルフも出来る。
シーンの度に、銅鑼を鳴らす趣味は日本人には気になるところだが、挿入歌の東京シューシャインボーイ、ディック・ミネのマイ・ブルーへブンが流れたりするのはご愛敬である。
コメディーであるが、この映画には健康なアメリカ精神が横溢しており、笑山は好きである。
組織の存在、組織への不可避的参加、組織の論理、組織の倫理、組織の目標、組織の掟...そうした物に我々現代人は取り込まれて生きている。そこから、抜け出そうとすれば、ホームレスになるより方法がない。
組織の一員として毎日仕事をしている人は、これらの重圧は肌に感じているだろう。感じていないとすれば、その人は組織人に洗脳されてしまった俗物である。
ロバート・アルトマン監督は、この組織に対して、能力ある個人を礼賛する。組織の馬鹿馬鹿しさを痛烈に風刺する。表面的には、もののわかった紳士面の俗物性を滑稽化してみせる。
組織に魂を委ねてはいけない、自分の良心・尊厳こそ生きる根拠、組織からはみ出しても一向に構わないじゃないかと。
我々は、間違った組織とは闘って生きていくんだという個人礼賛が、全編に溢れている。
唯のトタバタ喜劇ではないのである。
二度目にテーマソングが歌われるシーンである。
Painlessと渾名される歯科医は、人も羨む逸物の持ち主である。シャワー室のテントの外では、彼の逸物を見物しようとしている人達が溢れている。
その彼が、悩んでいる。神父に自殺すると告白する。神父はホークアイに何とかしてやってくれと頼む。
悩みの真相は、Painlessがデートして、その夜事に及ぼうとしたとき、逸物が役に立たなかったのである。彼は自分がホモであるかも知れないと世を悲観してしまったのである。
自殺を決行する夜、みんな集まって、死出に旅立つPainlessとお別れのパーティを開く。棺に身を横たえた彼に、それぞれ餞別の品を渡す。ヒトラーが使ったというブラックカプセルを手にした彼は、それを飲み静かに、棺に身を横たえる。
このパーティのシーンに「Suicide Is Painless」は、再び歌われる。冒頭のハーモニアスではあるが少しメランコリックな歌い方と違って、ゆっくりと、しみじみとした調子で歌われる。しかし、場面が進むにつれ、どうしたことか、陽気な歌い方に変わっていく。
頼まれたホークアイは部下の看護婦を、真夜中にテントの外に呼び出して、抱き合いながら、明日本土に帰国命令の出ているこの看護婦に依頼をする。
この夜、 Painlessと共にして欲しい。
看護婦は、そんなことは出来ないと答える。
ホークアイは言う。“君の貞操と人の命とどっちが大切なんだ?”と。
翌朝、食堂ではPainlessが何事もなかったように、明るい顔をして朝食を取っている。
帰国する看護婦は兵服に正装し、ヘリコプターに乗っている。
彼女の顔には観音様のような笑みが浮かんでいる。
M農水大臣は、MASHを見ていなかったのだろうか?
見ていれば、来し方を反省し、自殺は政治生命だけにして、翌朝何事もなかったように、朝食を食べていたと思われるのだが。
相変わらず子供から大人まで自殺者が多いという。
行き詰まったら、戻ることだ。間違った分かれ道まで戻ることだ。道に迷ったら、迷ったところまで引き返せばよいのだ。引き返して、もう一度、別の道を歩めばよいのである。
人生は、真っ直ぐした一本の道では無いのだから。
Suicide Is Painless
(M*A*S*H theme song by Johnny mandel )
Through Early morning fog I see
Visions of the things to be
The pains that are withheld for me
I realize and I can see
(chorus)
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
Try to find a way to make
All our little joys relate
Without that ever present hate
But now I know that it's too late
And
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
The game of life is hard to play
I'm going to lose it anyway
The losing card I'll someday lay
So this is all I have to say
That
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
The only way to win is cheat
And lay it down before I'm beat
And to another give a seat
For that's the only painless feat
'Cause
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
The sword of time will pierce our skins
It doesn't hurt when it begins
But as it works it's way on in
The pain grow stronger watch it grin
For
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
A brave man once requested me
To answer questions that are key
Is it to be or not to be
And I replied "Oh why ask me."
Cause
That Suicide is Painless
It brings on many changes
And I can take or leave it if I please
And you can do the same thing if you please
MASHは1970年(第23回)カンヌ映画祭グランプリを受賞している。

スタッフ
監督: Robert Altman ロバート・アルトマン
製作: Ingo Preminger インゴー・プレミンジャー
原作: Richard Hooker リチャード・フッカー
音楽: Johnny Mandel ジョニー・マンデル
キャスト
Donald Sutherland ドナルド・サザーランド (Hawkeye)
Elliott Gould エリオット・グールド (Trapper_John)
Tom Skerritt トム・スケリット (Duke)
Sally Kellerman サリー・ケラーマン (Major_Hot_Lips)
Robert Duvall ロバート・デュヴァル(Major_Frank_Burns)
楽しみにしてるんで更新頑張って下さいね!
僕のブログではターバン野口の折り方を紹介しています。
暇があったら是非どうぞ。
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