Googleの書籍電子化に関する危惧は以前にも書いた。
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/d/20090504
最終的な解決ではないが、この問題は一つの節目を迎えている。
Googleブック検索の修正版の和解案では日本など多くの国が対象外になり、英語圏だけに当面限定される見通しとなった。
5月以降、Googleの独走に対し、アメリカ国内で反対の動きが表面化し、Open Book Allianceが設立された。
この組織にはAmazon,Microsoft、yahooといった大手が参加している。
『書籍の電子化巡りGoogle対抗組織「Open Book Alliance」設立 - MSら参加
2009/08/28
Junya Suzuki
出版社や作家、IT業界関係者らが集まって作られた「Open Book Alliance」は8月26日(米国時間)、同組織の設立を正式に発表した。これは米Googleが同社のBook Searchサービス開始にあたり市場に出回っている本を無断で電子化していた問題で、米国出版社協会(AAP)と作家連合が2008年10月に合意に至った和解内容であるGoogle Book Settlement (GBS)に対抗するために作られた組織。Open Book Alliance設立にあたっては米Amazon.comのほか、MicrosoftやYahoo!も参加しており、急成長中の電子ブック市場の将来をかけたGoogleとの戦いが展開されている。
Googleがスキャニングによる市販の蔵書の電子化でGoogle Book Searchの無断インデックス化を進めていることが判明した際、AAPと作家連合らはGoogleに抗議、2008年10月に無断で電子化を行った書籍についてGoogleが解決金を払うことで両者が合意した。この合意内容はGBSのサイトにまとめられており、反対意見を持つ企業や団体などは5月5日から9月4日までの間に意思表示をせねばならず、この和解案を承認するための最後の公聴会の開催が10月7日に予定されている。このGBSの和解案は影響を及ぼす範囲が広く、日本での著作物もその対象となるなど出版界に大きな混乱をもたらしている。だがGBSへの抗議は米国の法的手順に則って行われねばならず、これを無視した場合には自動的に和解案を受け入れたことになる。すでに9月4日のデッドラインは間近に迫っており、各方面で動きが活発化している。
Open Book Allianceは、そのGBSに対抗する勢力の先兵となるものだ。もともと和解内容に合意できない作家連合や出版関係者、図書館関係者などが集まって組織されたもので、電子ブック市場でGoogleと今後衝突することになるAmazon.comが参加していた。米InformationWeekなどが報じているように、8月21日(現地時間)にはMicrosoftとYahoo!の参加も明らかとなり、反Google同盟が一堂に会した組織となった。以前にYahoo!やInternet Archiveが推進していた「Open Content Alliance」とは異なる組織だが、その目的はほぼ一致している。現在の参加メンバーは下記の通りだ。
Amazon
American Society of Journalists and Authors
Council of Literary Magazines and Presses
Internet Archive
Microsoft
New York Library Association
Small Press Distribution
Special Libraries Association
Yahoo!
Open Book Alliance結成に関して同共同会長のPeter Brantley氏とGary Reback氏は「700年以上前のグーテンベルクの活版印刷の発明は、知識の共有という新しい時代の先駆けとなった。本のデジタル化は、われわれがどのように本を読み、発見するのかの革命を再び起こすだろう。だが、単一の企業とそれと結託した一握りの出版社によってコントロールされる電子図書館は、より高い価格や平均以下のサービスをもたらす結果となるだろう」とコメントしている。』(マイコミジャーナル)
GoogleはOBAに対し譲歩案を出したが、OBAは単なる空騒ぎと一蹴した。
『Google、電子化した絶版書籍を他社も販売可能に
「Googleブック検索訴訟の和解案は独禁法違反」という批判に応え、Googleは和解案の下で電子化した書籍をAmazonなど他社も販売できるようにする。
2009年09月11日 11時48分 更新
米Googleは9月10日、物議を醸しているGoogleブック検索訴訟の和解案について、同社が電子化した書籍を他社も販売できるようにすると発表した。
Googleはこの新たな決定について、「Googleは和解の下で電子化した絶版書籍をホスティングし、Amazon、Barnes & Noble、地域の書店などの書店はこれら書籍をユーザーに販売できる。書店は並行して、独自に絶版本を電子化することもできる」と説明している。この新方針は「Googleに絶版書籍の電子化と商業利用を認める和解案は、独禁法に違反する」との批判に応えたもの。
しかし、AmazonやMicrosoftが参加するOpen Book Alliance(OBA)はこの発表を「空騒ぎ」とし、他社の再販を認めても、Googleが電子書籍をコントロールしていることや、同社のプライバシーポリシーに問題があることに変わりはないと主張している。「要するに、今回のGoogleの『譲歩』は新たな煙幕にすぎない」と同団体は述べている。
またこの日、Googleは下院司法委員会の公聴会に参加し、和解案について「競合他社も含め、誰でも容易に絶版書籍の権利をクリアし、ライセンスできるような仕組みになっている」と弁護した。』(ITmedia News)
今月に入り、和解案の修正が行われ、当面英語圏のみに限定することが公表された。
『グーグル書籍電子化、和解修正案を提出 英語圏4か国に限定
2009年11月16日 15:16 発信地:ワシントンD.C./米国
米インターネット検索大手グーグル(Google)が進める書籍の電子化をめぐる著作権集団訴訟の和解案をめぐり、グーグルと米作家協会(Authors Guild)および米国出版社協会(Association of American Publishers、AAP)は13日、米裁判所に修正案を提出した。
■日本を除外、英語圏に限定
約370ページに及ぶ修正案は、当初の和解案について米司法省などが指摘した著作権法や反トラスト法(独占禁止法)の観点から問題とされる点を考慮。効力が及ぶ範囲を、1月5日までに米著作権局(US Copyright Office)に登録済みの出版物、または米、英、カナダ、オーストラリアの英語圏の出版物に限定した。
また、権利の所在が不明な絶版書籍について、著作権者が今後特定された場合の利益保護に向けた独立機関を設けることを定めた。これらの書籍から得られる請求者のいない収益は、著作権者特定作業の費用に充てられるほか、少なくとも10年間は保管された後に米、カナダ、英、豪の出版関連の慈善団体に寄付するとしている。
■「反グーグル同盟」は批判
この修正案に対し、グーグルの電子書籍化に反対する同盟でソフトウエア大手マイクロソフト(Microsoft)やインターネット検索大手ヤフー(Yahoo)、インターネット小売大手アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)などが参加する「オープンブックアライアンス(Open Book Alliance)」は、「米司法省などが指摘した公共の利益に影響を与える根本的な欠陥をまったく解決していない」(ピーター・ブラントリー(Peter Brantley)共同議長)として、批判している。(c)AFP/Chris Lefkow』(AFP BBNews)
『Googleブック検索の和解案修正 日本など対象外に
修正版の和解案では日本など多くの国が対象外になり、孤児作品に関するGoogleの「最恵国待遇」も廃止された。
2009年11月16日 09時26分 更新
米Googleは11月13日、Googleブック検索をめぐる和解案の修正版を裁判所に提出した。対象国を米英などに限定するといった変更を加えている。
この和解案は2008年10月に、書籍を電子化して検索可能にするGoogleブック検索サービスをめぐり、出版社・作家の団体が起こした集団訴訟で提示された。和解案は、Googleの米国の絶版書籍の電子化と商業利用を認めるというもので、独禁法やプライバシーの点で懸念があると指摘する声が上がっていた。また和解が国際条約を通じて他国にも及ぶことから各国が懸念を表明していた。
Googleと出版者側はこうした批判や懸念を受けて和解案を以下のように修正した。主に、和解の及ぶ範囲、権利者の所在が不明の作品(いわゆる孤児作品)の扱いなどが変更されている。
和解の対象となるのは米著作権局に登録されている書籍、または英国、オーストラリア、カナダで出版された書籍のみ
修正版では、Googleが孤児作品を販売できる点は変更していないが、孤児作品による収益の扱いを規定している
修正版は、Googleが設立する権利管理団体Book Rights Registryに対し、孤児作品の権利者を探すこと、これら作品からの収益を保持しておくことを義務付ける。5年経過後、孤児作品から得られた収益は、権利者探しの費用として使用することができる。Book Rights Registryの経費に使用したり、ほかの権利者に分配することはできない。10年経過後、同レジストリはこれらの収益を非営利団体や政府機関に提供する許可を裁判所に求めることができる
和解の対象となる書籍(孤児作品も含む)は、Amazonなどほかの書店にも卸売りする。その場合、権利者は売上高の63%を、書店は残る37%の大半を受け取る
電子書籍へのアクセス方法について、修正版ではオンライン経由のアクセスのほか、オンデマンド印刷、ファイルダウンロード、消費者向けサブスクリプションに限るとしている
孤児作品に関して、いわゆる「最恵国条項」を削除した。この条項は、Book Rights RegistryがGoogleよりもいい条件で他社に書籍をライセンスした場合、その条件をGoogleにも適用しなければならないと定めていた
Googleは、「今回の修正により、和解を通じてできるだけ多くの国の書籍を利用できるようにすることがかなわなくなり、残念だ。しかし、世界中のすべての書籍をネットで利用可能にするという使命達成に向けて、各国の権利保持者と引き続き協力していきたい」とコメントしている。』(ITmedia News)
EU特に仏、独で反対の声が大きかったが、日本はGoogleの動きに対して、公共性の観点から組織だった動きはあったのだろうか?
国会図書館の書籍電子配信の取り組みは以下のような段階に留まっている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/15/news020.html
慶応大学は当初からGoogleに対して協力的だったが、他の大学図書館はどうなのだろう?
大阪城落城は、堀を埋められた和解案にあったことは、周知の事実だが、書籍の電子化も堀を埋められないようにしなければ、日本の文化は落城である。
一企業が、公共性の高いサービスを独占することは、誰が考えても危険だ。
国は、Googleが構想する前に、電子化について取り組みを明確にしておくべきだったのに、しなかった。
今回の騒動は、逆に言えばGoogleの先進性を証明していると言える。
日本が対象外になっている間に、日本の文化を守る危機感を持って解決しなければならない問題だ。
国、自治体、図書館が一体となって、日本の図書の電子化について考え方・組織を統一する必要がある。
著作権のあり方についても検討を要する。
著作権を、完全に私有財産のように考えるのはどうか?
文化財・美術品は、個人が、その考えによって博物館・美術館に寄贈が行われる。
著作権も公共著作権のような権利を認めて、其処に寄付して公共の著作権として公開されるようにすればよいと思う。
民主党でも自民党でも議員立法して欲しいものだ。