先日、「あらぐす」に行った時に、前を通った「沖縄料理 琉球王国」に行ってみた。
2008年にオープンした店だ。
店は通りに面しており、入り口に琉球王国の照明看板が出ているので、夜でも判りやすい。


入り口に立つと奥が深い。
女性一人では、少し入るのをためらうかもしれないが、若い人はそうではないだろう。

突き当たりに近づくと、右側に泡盛の一升瓶が並べられている。
泡盛に力を入れているようだ。
照明看板の右が、入り口。
ガラスのはまった格子戸の引き戸である。
引き戸を引いて中に入ると、すぐ正面がカウンターになっており、カウンターの奥が厨房になっており、店の人らしい女性と男性が中に居た。
引き戸を開け、"こんにちは" と言って中に入ったのだが、突然入ってきた人が誰だか判断しかねたのだろう。女性は目を合わせたままである。
構わずカウンターに近づき、"座っていいですか?"と言うと、"どうぞ"と言われた。
カウンターの左側には、先客の二人連れが座っている。
おしぼりが出て、"オリオンビールにしますか"と聞かれる。
"いや、泡盛にします。"と言って飲み物のメニューを見せてもらう。
カウンターには泡盛のテイスティングチャートが置いてある。
『泡盛「通」飲読本』のチャートを拡大コピーしたものだ。
お薦めは蔵元から直接届けられるという「直火請福」と「舞富名」とのこと。
"では請福をお願いします"と言うと。
"水割りで"と飲み方を聞かれる。
"ロックでお願いします"と答えると、最初からというような顔ををされた。
どうも、距離を測りかねる困ったお客さんのように映っているようだ。

カウンターの右側は、座敷になっている。
開店の18:00を少し過ぎただけなので、お客は誰もいない。
(写真には女性が写っているが、写真は後で撮ったため)。

入口近くには、三線と太鼓が置かれている。

楽器の上には、映画のポスターが貼られている。
カウンターも左の二人連れの後ろの棚には、泡盛の瓶が並んでいる。

これは、キープされたボトルだった。
棚の先の奥の突き当たりにお手洗いがあり、お手洗いを右に曲がったところにも10人くらい入れそうな小上りがあった。
かなりの収容力のある店だ。
【泡盛】
突き出しと注文した直火請福が出てきた。

突き出しは、ゴーヤーと赤玉ねぎのサラダ。
ゴーヤーのスライスと赤玉ねぎのスライスのさらしに汁のタレのようなものが掛けられて、かつを節がトッピングされている。
醤油の辛さと甘みのバランスご良いタレでタレの旨味に鰹節の旨味が加わって、ゴーヤー、タマネギの癖に負けない。
なかなか美味しいものだ。
「直火請福 一般種 30度」は、癖がないものだ。

立香はあまり感じない。丸い舌触りでふくらみがあり、バランスのとれた味わいだ。後口は、底に軽い苦味があり味を締めている泡盛らしい後口。

箸置きに珊瑚が使われている。
面白いアイデアだ。
並に削られた丸い珊瑚をみていると、沖縄の浜辺を思い出す。

カウンターに置いてあるテイスティングチャート。
爽・?・醇・熟の4象限に泡盛がマッピングされている。
この4つの軸で爽・?・醇・熟に分けるのは、元々日本酒のチャートとして用いられたものだ。
日本酒造組合中央会の分類を日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会がわかりやすくしたものだ。
http://www.sakejapan.com/index.php?option=com_content&view=article&id=22&Itemid=43
泡盛のチャートの場合は、少し変更を加えたほうが良いと思うが、泡盛の入門者には、判りやすくて良いだろう。

カウンターの奥の棚には店売り用の泡盛の瓶が並んでいる。
この店は、八重山の泡盛の品ぞろえが良いようだ。
2杯目の泡盛を探すべくチャートを見ると咲元のマークの右に海波と手描きで書いてある。
咲元酒造の知らない銘柄かと思い、
"海波は、咲元酒造の酒ですか?"と聞くと
"そうです、崎元酒造、八重山の酒です。"と答えがあった。
"咲元は首里の酒造所ですよね"と言うと、
瓶のラベルを見て"いや、与那国の蔵です。"と言う。
事態がここに至って漸くボタンの掛け違いが判明した。
チャートの咲元の横に海波とだけ書かれているので、咲元の酒と思い込んだのだが実際は崎元の酒だった。
筆談であれば起こらない思い違いだが、発音だけでは起こりうることだ。
咲元のにごり酒を飲むつもりだったのだが、行きがかり上崎元のにごり酒を飲むことになった。
『にごり泡盛は「初溜取り花酒」の原酒を造り、割り水とのブレンドの方法で白くにごらせています。白くにごっているのは、酒の旨みとなっている高級脂肪酸なので半年ぐらいで熟成が進みますと透明になっていき、さらにまろやかになります。にごりのあるうちは米の旨みも強く、ごはんの味がしますので味の変化も楽しめます。飲み方はロックもしくは好みにより水割りがおすすめです。』(崎元酒造HP)
「にごり泡盛 海波(かいは)一般酒 30度」の印象。

立香はあまり感じない。丸い舌触り、バランスのとれた味わいで刺激的な尖った味はない。直火請福と良く似た世界だ。
しかし、中盤からは請福とは違った展開になる。味わいが多味になり、含み香も出てくる。終盤にかけて押しが出てくる。後半はやや重い印象になる。
中盤からの印象は、咲元の44度に似ている。殆ど濾過をしていない泡盛は中盤から多味になるのだろう。
料理と合わせるのであれば、コッテリ系のものが良い感じだ。

ぐるくんの唐揚げ。
運んできた時に中骨は硬いですからとママから説明を受けた。
時間を掛け適温で長時間揚げてあるので骨まですべて食べられた。
説明通り中骨を除き頭から尻尾まで美味しくパリパリと頂いた。
入店した後、店は時間を追って混んできた。
すぐ左には、男の一人の客が座った、常連さんのようだ。
右の座敷の方は、3グループ入り、左の奥の小上りもグループで満席状態だ。
お店は二人なので、大忙しになっている。
色々お話を聞きたいのだが、話しかけるのも気の毒なので、話しかけられない。時を待つしか方法はなく、写真を撮ったり、メモを書いたりもする。

目の前のカウンターには、泡波の小瓶が並べられている。
左の方にも同じ瓶が並んでいるが、コーレグースが中に入っているようだ。
左の常連さんが泡波を注文した。
見ているとカウンター内の棚の上段真ん中から泡波の1升瓶を取り出した。
泡波はまだ飲んだことがないプレミア泡盛である。供給が細いことを漬け込んで買い占めて価格を釣り上げた業者の餌食になっている銘柄だ。
自分で買って飲むことは、プレミア価格である限り無い。
価格をきいてみるとショット1500円。
話の種に飲んでみることにした。
「泡波 一般酒 30度 」の印象。
立香は仄かなバニラ香。入り口は丸い舌触りで、酸味系の厚い味。中盤から次第に辛くなる。辛味系の味だが、スッキリとした辛味で、ピリピリした刺激的な辛味ではない。後口はピリ辛。

良い泡盛であるとは思うが、プレミア価格で飲む程のものではない。直火請福よりは個性的だが海波に比べれば海波のほうが味が複雑で後口も穏やかだ。
しかし飲んでいないと話はできないので、一度は飲む必要がある。飲める店は少ないので、その意味では、この店は貴重だ。
もう1本1升瓶があるそうなので、もうしばらくは飲むことができるそうだ。
忙しい処で、手のかかる注文で申し訳ないが、フーイリチーを注文した。
この店のメニューには、フーチャンプルーとフーイリチーと両方掲載されている。
チャンプルーには何が入っているのか聞くと、豆腐が入っているとのこと。麸に拘りがあるので、フーイリチーの方を選択した。

フーイリチーは、麸と玉子とニラだけのシンプルなもの。
シンプルなものほど料理は難しく、腕を要求される。
麸は大小色々あり、小さいものは香ばしく、大きい物はふんわりと柔らかく玉子と出汁の旨みが出てくる。
全体に香ばしさがあり美味しいフーイリチーだ。チャンプルーは食べていないので判らないが、フーイリチーにして良かった。
名古屋ではおすすめのフーイリチーだ。

食べ終わると、沖縄の魚紋の皿になった。
器にもこだわりがありおもてなしが感じられる。
【メニュー】
沖縄の料理は一通り味わうことができる。
今日の印象では、丁寧に作られているので、全て美味しそうな気がする。





「琉球めし」はあまり見かけないメニューだが、フーチバーをフィーチャリングしたチャーハンだそうだ。

座敷のホワイトボードには、メニューと同じことが書かれていた。

お手洗いの流しには、沖縄の巻貝が置かれていた。
八重山の珊瑚の浜辺に打ち上げられていたものだろう。
珊瑚の箸置きとか沖縄の遊び心があっていい感じだ。
【感想】
(1)泡盛については、品揃えも八重山中心ではあるが良く、珍しい泡盛もある。
料理も丁寧に作られており、こだわりが感じられる美味しさがあり、バランスの良い沖縄の店である。
店主は、内地の人だそうだが、自称沖縄マニヤだそうで、沖縄へのこだわりがあり、泡盛も料理も満足が出きる店だ。
泡盛と料理を仲間と話し合いながら楽しむには適当な店だ。
(2)大小の座敷もあり、カウンターもある。収容人数も多いので用途は、一人から宴会まで幅広く使うことができる店だ。
ただ、人数が多いと料理の提供に時間がかかるおそれがあり、居酒屋風のスピードを望むせっかちな人には向かない。飽く迄のんびりとウチナンチューの心でまったりと待つ人ならば問題はない。
(3)メニューには書かれていないが、泡盛のボトルキープも可能で4号瓶で3000円位からだそうだ。
カラカラも棚にあったので、カラカラで頼むことができるかもしれない。
今日の印象は、あまりにも客が多く、忙しく、沖縄らしいDEEPな空気ではなかった。
お客も今日のお客は、常連の一人を除いて、沖縄に染まった人たちではなさそうだ。
最近は、土日勤務の企業が増えているので木曜日は混むそうだ。
むしろ、月・火はゆっくりと話ができるかもしれない。沖縄の店のようにまったりとした会話・空気を店の人と楽しむには曜日と時間を選ぶ必要がありそうだ。
【データ】
沖縄料理 琉球王国
TEL: 052-251-7010
住所: 愛知県名古屋市中区栄4-5-19 万津元ビル 1F 営業時間: 18:00~24:00
夜10時以降入店可
定休日: 日・祝
予約: 予約可
カード 可 (VISA、MASTER)
個室: 有 2部屋(9人用と20~30人用)
席数: 40席
貸切: 可 (20人~50人可)
駐車場: 無
禁煙・喫煙: 全面喫煙可
ホームページ: http://www.site-builder.jp/1090/ryukyuokoku/
ブログ: トミーのブログ
http://ameblo.jp/cafeayaha/
琉球王国 トミー店長のおさぼり日記。
http://okinawaayaha.blog46.fc2.com/
アクセスは、わかりにくはないが栄周辺には紛らわしい沖縄の店があるので間違えないように確認してから行く必要がある。
近くには「泡盛王国」と言う店があり、栄の北西には「琉球王国 遊び島」と言う店もあるそうだ。
それぞれ別の店なので注意する必要がある。